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コーヒー&シガレッツのBeSiのレビュー・感想・評価

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)
4.9
恥ずかしながら、人生初ジム・ジャームッシュです。初めての今回は「コーヒー&シガレッツ」。完全に本作で彼の虜になりました。去年行った沖縄旅行で購入した琉球ガラスに入れたソイラテを飲みながら......☕️以下、各話一覧とレビュー。


"変な出会い" [STRANGE TO MEET YOU]
スティーヴンと名乗る男性と出会ったロベルト。しかし、コーヒーとタバコを嗜む2人の会話はどこかおかしく、噛み合いません。英語を話せはするが理解していないロベルトとそれに困惑するスティーヴンの2人の会話の、少しコミカルな雰囲気がとても愛おしい。ホントに微妙な出会いだったね......。

"双子" [TWINS]
あるカフェで過ごす男女の双子。そこへ仕事をサボった店員ダニーがやってきて、双子の関係性やエルヴィス・プレスリーについて話し始めます。ダニーの長話に呆れた双子の様子と、1人お喋りを続けるダニーの温度差が何とも言えない。ダニーのような店員がいることがカフェのサービス悪さを物語ってるのも面白いですね。大好きなお話。

"カリフォルニアのどこかで"
[SOMEWHERE IN CALIFORNIA)
カリフォルニアのどこかのカフェで出会ったミュージシャンのイギーと医者のトム。お互いの生活の不満などを話し合う2人。しかし時折、気まずい空気と時間が流れます。やっぱり難しいよね。初めて会う人あまり会う回数を重ねていない人と話すのって。誤解は生むだろうし、大人になって一層染みてくる価値観の違いもある。独特の空気感がたまらないエピソードです。

"それは命取り"
[THOSE THING’LL KILL YA]
カフェで談笑するジョーとヴィニー。長年の付き合いもあって、ジョーはヴィニーのニコチン中毒を心配し咎めます。そこへヴィニーの息子Jr.がやってきます。もう先は長くないであろうこれからの人生について話す2人と、その間に割って入る若く生意気な息子のギャップが面白いです。日本のお菓子は海外の人には合わないこと多いのかな。

"ルネ" [RENEE]
カフェで1人銃やナイフの写真がズラリと並んだ雑誌を眺めながらコーヒーとタバコを嗜んでいる女性ルネ。そんな彼女とウェイターの中身も何も無い会話。推測するに、ルネは恐らく諜報員か殺し屋(考えすぎかな)。このウェイターは命知らずですね。ちなみに、ルネ・フレンチはニューヨーク在住という情報しか無く、本作の制作チームの一員である説が濃厚とのこと。50年代のハリウッド女優を彷彿とさせる優美な佇まい、エキゾチックな雰囲気そして美しさがシュールさを引き立てています。一番好きなお話。

"問題なし" [NO PROBLEM]
友人イザックとカフェで待ち合わせることになった男性アレックス。しかし彼はどこかおかしい様子。何か問題があったのかとイザックが心配します。終始 "問題ない" と "心配だ" の繰り返し。何気なく友人を呼んでみただけの飾り気の無いアレックスと、気遣いをしてくれる心優しいイザックの友情の深さを感じられる、温かいお話です。

"いとこ同士" [COUSINS]
ケイトとシェリーは、いとこ同士と言えど、生き方は全然違う。ケイトは女優業に専念する一方で、シェリーはパンクロッカーの恋人を見つける。自分とは異なった境遇にいるケイトに対する妬み嫉みの感情がシェリーの表情や言動から露わになっていて、最後まで少し嫌な雰囲気......。兄弟姉妹でも多いよねこういうこと。一人二役を演じるケイトの素晴らしい演技が印象的でした。

"ジャック、メグにテスラコイルを見せる"
[JACK SHOWS MEG HIS TESLA COIL]
静かなカフェで、ジャックがメグに、自分でつくりあげたテスラコイルを見せたいと言い、実験を始めます。話の設定としては、大学で何かしらの電気工学を研究しているといった具合なのでしょう(実際に2人はアーティストですが)。彼らの団結力の強さのようなものが伺えます。少し変わった言動をするのも、彼らだけの個性と言えますね。唐突に入ってきた店員さんが少しだけ実験失敗の原因を解説した場面は面白かった。"地球は共鳴伝導体" この映画に通ずる名言です。

"いとこ同士?" [COUSINS?]
人気コメディアン俳優のスティーヴとの対話に心踊らせる俳優のアルフレッドは、家系図を辿っていくと自分たちがいとこ同士であることを基に何か作品を作れないかとスティーヴに提案するが、スティーヴは何の興味も無い様子。うわー何か嫌だなこの雰囲気。興味の無い人に話合わせなきゃいけないスティーヴも気の毒だけど、アルフレッドが一番気の毒だよ......。こんな雰囲気の中で飲む紅茶なんて......美味しいわけないよなぁ。

"幻覚" [DELIRIUM]
カフェで談笑していたRZAとGZA。そこへ、店員に扮したビル・マーレイがやってきた!困惑する2人に、ビルは自分が追われている身にあるが、もしかすると幻覚を見ているのだと思うと話す。気を落ち着かせるためかコーヒーをポットで直飲みするビルに、ニコチン中毒になると心配するRZAを尻目に、ビルはポット直飲みとタバコスパスパを繰り返す。さすがコメディアン。ビルの独特なユーモアが静かな空間に笑いを生み出します。

"シャンパン" [CHAMPAGNE]
武器庫で会話をしている労働者のビルとテイラー。タイラーは頭の中で、美しくも物悲しい曲が時折流れるのだと話す。するとどこかから美しい調べが聴こえてくる。やがて休憩時間の終了を迎えた2人だったが、テイラーはビルの呼びかけには応じずそのまま微動だにしないのだった。この音楽は、テイラーの死の前兆を意味しているのだろうか。上流階級のように、優雅に......。



コーヒーの黒、カップ&ソーサーの白の対比、テーブルの碁盤の目の白黒の模様。様々な形で対比される白と黒が本作のアクセントとなり、お洒落でレトロな雰囲気を醸し出しています。本当に心地が良い。コーヒーを一杯。タバコを一杯。会話を楽しむ。人生を楽しむ。コーヒーとタバコがもたらす "無駄" に癒される、静謐で素敵な作品。
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