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CLIMAX クライマックスのBeSiのレビュー・感想・評価

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)
4.8
『ジョン・ウィック』まで時間あるので......。初めてのギャスパー・ノエです。正直言ってこの作品を最初に選んだことを後悔してます。以下レビュー。

1996年、冬。アメリカ公演のリハーサルのため人里離れた山小屋に集まった22人のダンサー。しかし、何者かによってLSDが混入されたサングリアを飲んだことにより彼らはドラッグ中毒に陥る。それは紛れも無く、狂乱と混沌に満ちた一夜の合図であった......。




✔ダンス
本作で目が離せないポイントといえば、やはりダンスですよね。監督であるギャスパーは、序盤は振り付けや構成に関して出演者に各々指示をしていたものの、途中からは "自由に自分自身を表現する" ことにしたそう。繊細で妖艶ながらも激しい彼らのダンスから溢れるエネルギー、スクリーンいっぱいに映る表現の塊。こんなにも引き込まれる映画のイントロは初めて。本当に最高でした。皆で輪になってそれぞれが自由に踊るシーンが好き!!🕺

✔フランス映画の魅力
ギャスパー・ノエのことだから......って思ってたけど、本作にはフランス映画好きには嬉しい魅力も詰め込まれてました(最初だけ!!)雑音と人々の声が響くダンス会場だけど、映画のワンショットにしてみると彼らの会話が一際目立つし、オシャレに見える。話し方、話すスピード、声の抑揚、全部がオシャレ。個人的にはセルヴァとルーの2人が好きかも。

✔トリビア
💃キャスト
本作に出演している主要キャストの中で、演技経験者はソフィアただ一人。彼女以外は全員演技未経験のダンサーたちが起用されています。ギャスパーは "薬物摂取の影響" に関する動画を見る等、資料の収集をすることで彼らが演技に没入できるようにしたそうです。

📽製作
・短期決戦
脚本5ページ、撮影期間15日。カンヌ国際映画祭出展に間に合うよう、4ヶ月で全ての工程を完了させたそうな。
・ダンスシーン
冒頭10分間の迫力ある長回しのダンスシーンは、完璧なショットが出来るまで15~16テイクも回数をかけたという......。
・雪
映画の冒頭と終盤で見られた、ルーが降り積もる雪の上を這う印象的なシーン。この時に降った雪は偶発的なものだったのだとか(セットは制作しなかった) 。2日間雪が降ると予報が出て、急遽ドローンを飛ばして撮影したそうです。ルー役のスエリアはさぞ寒かったに違いない。
・長回し
映画の中では、LSD混入が発覚して事態が酷さを増してから、カメラはセルヴァを中心としてカオスな模様を捉え続けます。約42分間ノーカット。この手法を取り入れたのは、140分間を全編ワンカットで撮影し製作されたドイツ映画『ヴィクトリア』に影響を受けたからとギャスパーは言っています。薬物中毒になってる人たちをワンカットで見せられると、まあ疲れますね。鑑賞後の疲労感は半端じゃなかったです......。(『ヴィクトリア』は長回しを題材にした作品の中でも特に素晴らしいと名高い映画のひとつ。僕はベストムービーに入れてるくらい好きな映画です😊気になる方はぜひ観てみてね!!)

🪐コンセプト
企画の当初、ギャスパーは "スタンリー・キューブリック『2001年 宇宙の旅』に対比する映画" を作ろうと思っていたそう。"『クライマックス』は人間が類人猿に退化する映画" であると彼は語っています。また、本作での過激な映像はギャスパー自身が今まで見た悪夢や幻覚を基に作ったといいます。

⛪️謎の格言
本編に登場した格言を最後に紹介。
・"生きることは儚い幻想である"
・"人生とは集合的な不可能性である"
・"出産は特異な経験である"
・"死は並外れた経験である"

どーゆーこと😍??😚?😭?🤩💀




初ギャスパー、凄い体験でした。
薬物乱用防止教室レベル100の映画にふさわしい作品だと思います。五感に伝わる衝撃と爆発的なエネルギー。『クライマックス』はまさに精神に作用する傑作。ギャスパー・ノエの純粋で自由な世界観を全身で感じられる強烈な一本です。もう二度と観ない。
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