むぅ

ベイブのむぅのレビュー・感想・評価

ベイブ(1995年製作の映画)
3.7
こ、こ、子ブタでさえ
吠えたり噛んだりしないで
お願いしたら話を聞いてくれたよ
と言っているのに。


収穫祭の景品としてある牧場にやってきた子豚のベイブ。
知らない、分からないことだらけの中、牧場で暮らす様々な動物達と仲良くなりながら牧羊犬ならぬ"牧羊豚"を目指すことになって....。

ベイブが可愛い。
もちろん見た目も愛くるしいのだが、誰に対しても純粋で素直に接し、とても優しく礼儀正しい。
そんなベイブのひたむきな姿に、他の動物たちの凝り固まった価値観がほぐされていく様が、なかなかに興味深い。
羊たちを脅して思い通りにさせようとする犬に、ベイブが言った「お話したら聞いてくれたよ」の言葉でロシアとウクライナを思ってしまった。
羊にだって、犬にだって、豚にだって歴史や物語がある。
そこを大切に思いやり、相手の言葉に耳を傾けないと"対話"は出来ない。その対話が出来てからこそ、議論を始めるべきじゃないのかとも。
"ベイブ"でいるために、"ベイブ"になるために、今するべきこと、出来ること、それを実行に移すこと。
トコトコと走るベイブの姿が、勇敢だった。
"強い"ことは、"大きい"ことや"怖い"こと"勝つ"ことではない。そんな当たり前のことを動物たちに改めて教えられた気がした。

「(どうしよう、恥ずかしい)」
そう痛烈に思った経験を思い出した。
「一緒に飲んじゃいますか!」
遅番のメンバーで飲みに行こうとしていたところ、隣の店舗の人達も飲みに行く様子だったので、急遽お隣のお店同士の交流会が開かれることになった。
何の話だったかは忘れてしまった。けれども私の
「えー、それって負けた気がする」
という言葉に
「君って何でも勝ち負けで判断するの?」
と返ってきた。
痛かった。隣の店舗のメガネさん。話すのもその日が初めてだったし、いつの間にか辞めてしまって、今街ですれ違っても気付けないだろう。
でもその言葉で気付かされたもの、改めさせられたものは大きい。10年以上経った今でも時々思い出す。
そして油断したり、疲れていたりするとまだ"勝ち負け判断"の価値観が顔を出すことがある。

私の"ベイブ"への道のりはまだまだ長い。


とりあえず、週末あたり...と思っていた白菜と豚バラの鍋は延期にしよう。
むぅ

むぅ