翔海

ヴァージン・スーサイズの翔海のレビュー・感想・評価

ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)
4.0
私たちから自由を奪わないで。

1970年代のミシガン州に住むリスボン家にはラックス、テリーズ、メアリー、ボニー、セシリアという美しい5人姉妹が住んでいた。彼女たちは街の少年たちの注目の的であり、ある事件をきっかけに街中に名が知れ渡る。それは末っ子のセシリアがある日、風呂場で手首を切りつけて自殺を図った事件である。医者がセシリアに理由を聞いても「死にたかったわけではない、自分を消したかった」と話す。セシリアの自殺は未遂で終わり、また日常が戻ったと思った矢先にセシリアは家の2階から飛び降りて自殺をした。13歳の少女は何故自ら命を絶ったのか。憶測が飛び交う中でメディアや周りに振り回されてゆく家族。妹を失った4姉妹は変わらず生活を送っていたが、悩みを抱えていたのはセシリアだけではなかった。これは美しくも短い生涯を過ごした彼女たちの記録である。

子供の気持ちは大人にも理解できないことが暫しある。
過保護な親によって育てられた少女たちに自由は少なかった。他の子だったら、親が違かったらとか思っただろう。けれど、子は親を選べず親も子を選べない。運命を呪うしかないのである。やっと手に入れた自由ですら、一回の過ちからまた失ってしまう。子供だから間違いだってあるのにも厳しい親は彼女たちから自由を奪う。それは末っ子のセシリアが亡くなった理由もあるが、母親にも原因はあるはず。それが理由でセシリアも自殺をしたのかもしれない。儚くも短い命であったが、彼女たちは周りの人たちの記憶には残り続けるだろう。

ソフィア・コッポラ監督の初監督作品。
ロスト・イン・トランスレーションやsomewhereで有名なソフィア・コッポラ監督であるが処女作を見るのは今回が初めてであった。映画好きな友達はこの作品が好きであり、10代を過ごした女の子だったら気持ちが分かると言っていた。そもそも性別が違う私にこの作品を見るに値するか心配であったが、思いの外に作品に没入はできたと思う。自由を奪われた少女たちの姿や作品を彩るサウンドトラックたち。全てがソフィア・コッポラ監督のセンスを感じ、これまでに見たソフィア・コッポラ作品の中で一番すきと思った。命の儚さをソフィア・コッポラは上手く表現した作品。
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