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疑惑の影のRのレビュー・感想・評価

疑惑の影(1942年製作の映画)
4.3
非常に緻密に構成されたサイコロジカルサスペンスで、見るの5回目やけど毎度すごいなーとしみじみ感じる。警察にひそかに未亡人連続殺人事件の容疑者視されてる(そして事実犯人である)チャーリーが、同名の姪の住む一家を、しばらくぶりに訪れる。チャーリーのお姉さん(姪のチャーリーの母)は多忙な日常生活に常に追われている初老のおばさんで、娘のチャーリーはそんな母を見、そして自分の生活の平凡さに嫌気がさし、人生の退屈さを取り払ってくれるものを求めていたところなので、イケメンのチャーリーおじさんの訪問に欣喜雀躍。ママも大感動で落涙の大歓迎。ふたりのチャーリーは恋人同士のように腕組みして街を歩き、みんなが羨ましそうに振り返るのを鼻高々に受け流す。だが、喜びに満ち溢れた一家に、こちらもイケメンの刑事が捜査に入ってきて、チャーリーおじさんの闇をチャーリーに告げ、小娘は苦悩し始める。憧れのチャーリーおじさんがまさか殺人鬼だなんて…信じられない…そのことを知ったらお母さんはどうなるだろう…何とか大きな騒ぎにならずにこの問題を終わらせられないだろうか…。おもしろいのは、チャーリーはけっこうずっとチャーリーおじさんへの恋心を捨てられないんだね。それがとても痛いのです。その気持ちが少しずつ別のものへ移行していくプロセスが見もの。ほんで、まぁそっからいくつかツイストがあって、何とも言えない、グレーな、皮肉な、エンディングを迎える。ほんとよく練られたストーリーで、日常のなかに忍び込んでくる闇への不安を巧みに語り、始終目が離せない展開なのではあるが、純粋に映画的な奇跡の傑作群を作り続けたヒッチコックのフィルモグラフィーのなかでは、ちょっぴり映像的な面白さには欠けるかなー? いやでも最高なシーンもいくつもあり。特に、チャーリーおじさんが階段を上っていく途中でチャーリーを振り返るシーンのヒヤッとくる感じはすごかった。まさに悪夢。あと、電車の到着シーンの不気味さとか、Til Twoバーのまったくかけ離れた境遇の女の子の演出の鮮やかさとか、実によかったですねー。なんだかんだでずっと前のめりで、人間の心の闇に引きつけられていました。やっぱヒッチコック!好き!
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