あなぐらむ

宿無し犬のあなぐらむのレビュー・感想・評価

宿無し犬(1964年製作の映画)
3.9
ラピュタ阿佐ヶ谷「犬」シリーズ特集で。

C調ガンマン・鴨井大介シリーズの第一作。
四国から神戸を舞台に、惚れた女を守る為、放火保険金詐欺で暗躍するやくざ組織を鴨井はんが叩き潰す時代劇っぽさもある人情編。
敵役に水島道太郎を据えて重みも十分、薄幸ヒロインは本作最多?出場の江波杏子。名前が朝子なのは、朝吉から?

初作ながら鴨井の不敵なマシンガントークと天知茂の木村刑事=ショボクレのキャラが既に完成されており、シリーズ通してのキャラである坂本スミ子も快調。まだ鴨井の銃フェチ度は低いが、使用するコルト・ポケットはちゃんと排莢、ホールドオープンする。
宿無し犬であった大介に"ムショ"という宿をくれてやる、という綺麗な落とし方も見事だ。
そこまで銃撃シーンがある訳ではない(田宮二郎はしっかり見せてくれる)ので、ガンアクションとしては刺激的ではないが、江波杏子がそれなりにヒロインを演じる辺りもカチカチっとした所があり、真面目な田中徳三監督らしさが出ている。武田千吉郎の撮影も流麗。
本作から鴨井はんの名台詞。「なるほど、お前らの方が一枚上手っちゅう訳やな。ほなら俺は一枚下がって、二枚目じゃ」
ダイアログ作家としての藤本義一の腕が冴え、このシリーズは八本を数える人気作となっていく(途中で製作が京都→東京となるが)。

鑑賞後は素うどん、と行きたい所だったが、久々の阿佐ヶ谷だったので某町中華でラーメンと餃子を。薄幸モードの芦川いづみさんか浜田ゆう子(地味な眼鏡モード)が働いていそうな素敵なお店でした。