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モンスターズ/地球外生命体のRのレビュー・感想・評価

3.8
Ohhhなんだかとっても不思議な味わいの映画でした。ハラハラドキドキど派手なモンスターアクションを期待して見始めたら、そんな雰囲気は冒頭のPOVシーンのみ。粗い映像で何が起こってるのか不明瞭ななか、モンスターと陸軍が死闘を繰り広げる、混乱、パニック、断末魔の叫び。主人公のコールダーは危険地帯であるメキシコ北部付近でモンスターによる破壊を取材するカメラマン、新聞社の社長令嬢サマンサが危険地帯付近にいるので、アメリカまで無事連れて戻れ、との司令が与えられる。まだそこで仕事を続行したいコールダーはしぶしぶおてんばサマンサを連れ、危険地帯を通り抜け、アメリカに連れて帰ろうとする、というお話。その道々、モンスターと遭遇する恐ろしいシーンが続出するんだろーな、と思いきや、ぜんぜん出てきません。が、いつ出て来てもおかしくない、不穏な緊張感がたえず漂ってる。そんななか、サバイバルに対して無知なお嬢さんと、サバイバルに対する後ろめたさを感じて生きるカメラマンとの関係の変化が描かれていく。ある意味本作は、社会というジャングルのなかで人間が生きるということのメタファーになっているのではと思われる。サマンサがリアリティの残酷な一端を目にするシーンは殊に象徴的。そして、人間に襲いかかる残酷な現実の具象として、正体不明のモンスターが存在しているのだ。しかし、その現実とて、自然の、宇宙の、生命の、生の活動の一側面であって、そこに人間が自分の立場から見た人間なりの意味を付与しているに過ぎない。それを深く感じさせる静謐で神秘的なクライマックス、自分たち二人と酷似した生命活動に圧倒されるシーンは、見ているこちらも圧倒され、大宇宙の営みに対する畏怖の念に満たされる。素晴らしいシーンです。ちなみにモンスターの造形は、テンタクルスフェチのボクにはたまらないものでありました。タコ、イカ、クラゲを愛して止まない人類への贈り物、ありがとう。また、メキシコからアメリカへ帰還すべく、ジャングルを進み、河を上り、古代遺跡を登って、メキシコーアメリカ間に建てられた堅牢な塁壁を遙かに見渡すシーンは、現実と照らし合わせてとても感慨深い気持ちになった。壁とは護りであり分断であり拒絶である。ってな具合に、すべてのシーンが我々の生きる世界の現象を想起させ、まるで見せかけのコーティングを取り払った剥き出しの世界を見てる気分。そういう意味では面白い映画やけど、普通にモンスターパニックを期待するととんでもなく退屈すると思われる。かく云うボクも、そもそもそんな方向性の映画だと知らずに見始めたので、中盤過ぎるくらいまではぽやーんと見てしまった。あと少々残念だったのは、主演のふたりがあまり魅力的に思えなかったこと、ヒューマンドラマベースにしてはそんなに人物描写が深くなく、類型的なキャラだな、と感じてしまったとこ。とはいえ、予想を超えるテーマの広がりは素晴らしかったです。一定のリズムを淡々と刻みながら、ふわーーーと漂うようなストリングスがのっかったテーマ曲も好き! で、見終わった後、もう一度オープニングを見て、ん? なんだなんだ? ってコマ送りで見ると、うわぁ……。面白かったよ!
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