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モンスターのRのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
5.0
すさまじい映画を見た! すごすぎて見てる間ずっと腹わたがしぼられてるような感じがした。10代前半からずっと、ヒッチハイクして男の車に乗り込んでは、体を売ってその日暮らしの生活をしてきたアイリーン。今までずっと強気でサバイバルしてきたが、もはや年をとって体もボテって肌もボロボロ、お金も愛も希望もない、これ以上こんなゴミのような人生を生き続けることはできない。自殺を決意し、決行する前に、残りの数ドルで最後の一杯を飲もうと、たまたま飲みに入ったレズビアンバーで、セルビーという少女に出会う。それまで人生で一度も人間のストレートな温情に触れたことのなかったアイリーンは、若くて未熟なセルビーの、不器用だが純粋な求愛によって、生まれてはじめて、激しい愛の衝動に突き動かされる! このシーンは、マジで、いままで見た映画の中でもトップクラスの衝撃だった! アイリーンという人間存在の生命の根底から興奮と喜びが湧き上がり、毛先にまで届いて、文字通りからだ中が震えてる様子が、すさまじく感動的で、衝撃的で、やるせなくて、たまらなかった。見てられなかった。このシーンを見ただけでも十二分に見る価値があると思った。が、こっから、愛ゆえに、あまりにも恐ろしく、悲しい展開が! 前情報まったくなしで見始めたのもあるけど、ホントに見てるのつらすぎた。セルビーのためにこれまでの生活を一変させようとするんやけど、どうやったらいいのかまったく分からず、吠えてばかりのアイリーン。そして、ある男にレイプ殺人されかけることをキッカケに、取り返しのつかないとんでもないことになっていく。アイリーンの人生の痛々しさに肺腑をえぐられっぱなしの2時間。罪を憎んで人を憎まず、という言葉がふと脳裏をよぎるが、そんなレベルをゆうに超えてる。この世界には、アイリーンのように暮らしてる人がいまも数え切れないほどいるのだろう。その人たちは、自分が生まれた環境という、決して変えることのできない牢獄の中で、ただただ地獄の苦しみに耐えながら生きている。彼女たちは、普通に我々が想定している人間らしい人生を生きられる可能性が、ほとんどゼロに近い。愛すらも狂気のキッカケとなり、神も絶望の慰めにはなりえない。彼女たちにとって、真の意味で、生命の救いとなるものが、一体存在するのだろうか、あるとしたらそれは何なのか。それこそが全人類の救いとなるものではないか。思わずそんなことを考えてしまう。もちろん、アイリーンが最悪な人間であることは否定しようがない。しかし、彼女を最悪な状態に導いたのは、彼女ががんじからめになっていた彼女の宿命のゆえだ。幼く無知なまま世界にいじめぬかれた彼女が、自分ひとりの力でどうにかできる問題では、絶対になかった。最後は、ほんとに胸が引き裂かれそうなほど、苦しかった。苦しくて、苦しくて、たまらなかった。けど、これだけは言いたい、アイリーンのためには、セルビーに出会えたことはほんとうによかった。ほんとうによかった。結果とんでもないことが起こってしまったけど、それがなかったらアイリーンの人生は本当に闇しかなかったことになってしまう。そんな酷いことがあっていいはずがない。マジですごい映画やった。アイリーンを演じたシャーリーズセロンは驚異としか言いようがない。女優の仕事としては映画史のひとつの頂点だと思う。口の動きとか、体の動きとか、理性的に自分を制御できてる感じがまったくしないとことか、リアルすぎて演技と思えない。すべての瞬間が完ぺきにアイリーンだった。そして、セルビーを演じたクリスティーナリッチーもほんとに素晴らしかった。最後、すべてが終わって、エンドクレジットの途中でとつぜんはげしく涙が出てきて、自分でもビックリした。しかも全然止まらねーの。自分の大好きな人たちを、愛して止まぬ、大事な大事な人たちを、死ぬまで愛しぬいて生きていきたい。心の底からそう思った。何度も繰り返し見たい! 確実に人生の一本! ベストムービーも変更!
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