マサキシンペイ

バベルのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

バベル(2006年製作の映画)
3.1
菊地凛子の出世作として、日本では恐らく一番知っている人が多いイニャリトゥ作品。過去三作と同様に群像劇で、画の綺麗さや演者の演技力が素晴らしい。

ただ、物語の構成としてはかなり散らかっている。
過去二作に見るイニャリトゥの群像劇は、一つの事件の加害者と被害者、その事件によって二次的に運命を左右される人物の、三人の視点から紐解かれる悲劇、と言うのが基本構造である。
しかし今作では加害者、被害者にもう二人加え、合計四人もの視点が盛り込まれ、正直二時間半の枠に対してかなりオーバーボリュームな内容に感じられた。かつ、その事件外の二人に降りかかる悲劇が事件とは直接関係なく、物語においての因果律の切り取り方に疑問を感じた。
タイトルから連想されるような「伝えたい思いを遮る壁」というテーマがまず第一にあって、そのテーマに関連した物語をただ集めただけのように思え、構成としてはお世辞にも成功しているとは言えない。

一つ一つの物語は決して完成度が低いわけではなく、二、三本の上質な映画が一本になったような映画という印象。
マサキシンペイ

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