わたがし

JUNO/ジュノのわたがしのレビュー・感想・評価

JUNO/ジュノ(2007年製作の映画)
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 オープニングクレジットからもう最高で、ほのぼのゆったりとした雰囲気を打ち出しつつも綺麗ごとで収まるつもりは全然ない、というこの作品の精神性がブワッと出てる。アメリカ映画のこういうところが本当に好き。必ず打ち出される価値観とは対極の価値観も忘れずに描く。幼稚性の中に宿る成熟性とか、露悪の中に潜む性善説とか、アメリカ映画のそういうところ!!
 出てくる人はみんな良い人間で、根っからのクズはひとりも出てこない。でも全然嘘臭さのない全うな真実がきちんと描かれていて、凄いのがそれがちゃんと面白いエンターテインメントになっているということ。観終わった感覚、フィフティ・フィフティに近かった。
 その「全うな真実」というのも、一見ものすごく普遍的で保守的なことを言っているようで実はかなり「自分さえ幸せならそれで万歳」的な、一般的にはあまり良いと思われていない(少なくとも日本では)類のことを言っている気がする。みんながどうとか、世間がどうとか、そんなことを丸ごと度外視して「自分がどう幸せになるか」にのみ的を絞ったテーマで、それがジュノのキャラクター性とも上手く絡み合っていて、本当に、本当に良くできた脚本だなと惚れ惚れする。
 ただやっぱり、性格の悪い人間なので「こんな良い人ばっかりなわけあるかよ」とか「こいつが突然そんなこと言うかよ」みたいなことは思ってしまう。でも、確かにこの映画は「こんな良い人ばっかりなわけあるかよ」とか思ってしまう側の人間に寄り添う映画だし、何が言いたいかって本当に面倒臭いぐらい好きな映画。
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