Jaya

クリーン、シェーブンのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

クリーン、シェーブン(1993年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

パラノイアだか統失だかのピーターが娘に会いにいくお話。いちいち痛ーい!乳首剃り落とすんじゃないかとヒヤヒヤ。

外見的にも内面的にも、病態をリアルに伝える手腕が途轍もない。ラジオ以外のSEもかなり気を遣っていたように。冒頭、車を「危ない奴が乗ってる」ような見た目に仕上げる様子からして尋常じゃない。実際に目にしたのかな。

また、内外の境界が曖昧になり思考の整合性が失われている描写が凄いです。話が進むに連れて、支離滅裂に見える言動が実は内的世界の論理では合理性を保っている様子が明らかに。他者との通路が荒廃しているだけという実際が苦しい。

人物の不穏な様子も、どこまで客観的なのか不安にさせられます。一連の描写が余りに的確。とにかくピーターの苦しさ辛さが伝わってきていたたまれない。

ピーターが犯人であったのかは明らかにされませんが、刑事の一貫した無能ぶりは、真実を示唆するものだったのかも。しかし自分が刑事だったとして、偏見を捨て通路を開こうとすることが果たしてできるのだろうか。

いずれにせよ不憫すぎるニコール。ピーターとの束の間の時間が救いではありながら痛ましい。観ていて本当に辛い。

冒頭、これは偏見を助長するものでは?とも思いましたが完全に杞憂で、むしろ彼(ら)の苦しみが丹念に描き出されており、病に冒された精神世界が冷徹かつ強烈なリアリティをもって映し出されていた名作でした。
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