こうん

こわれゆく女のこうんのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.6
この「こわれゆく女」も久しぶりに観たんですけど、以前までとは全然見方が違って、ちょっとびっくりした。
つまりはピーター・フォーク演じるニックの有害性ですよ。それを以前は愛情過多の強い当たり、くらいに思ってたんだけど、今回見たらば「こいつがメイベル追い詰めてんじゃん!」と思いましたね。
それはもちろん時代性もあるしイタリア系の気質もあるかもしれないし、でもいずれにしてもこの夫婦のジェンダーは不均衡だし、そこに〝夫婦愛〟があろうとも、観ていて歯痒いものがありましたね。
そして今更そこに気づくわたしの鈍臭さね!
カサヴェテス崇拝で目が曇ってたのかもしれないけど、新たな視点で観られてよかったです…でもカサヴェテス崇拝に揺らぎはありません。

しかし「ラヴ・ストリームス」も本作も約2時間半、この長尺の濃厚人間スリル劇場を続けて観るのはなかなかのハード体験でした。金王坂の歩道橋で腰が軋みましたね。

映画というのはその製作体制がミニマムであればあるほど作り手の人間性がその映画に色濃く宿るものだと思っていますが、インディペンデント映画の中興の祖であるカサヴェテス映画はカサヴェテスという人間そのものなのかもしれず、そうするとカサヴェテスの映画を銀幕で観ることはつまり、カサヴェテスに会うことそのものなのではないか?とすら思うわけで、だからみんな何度もカサヴェテス観に行くんだな、と満席の劇場を眺めて思いましたね。
人によっては教えを乞いに行っているので、みんなカサヴェテスの歿後弟子なわけだ。

なんにせよ、今回のレトロスペクティヴは全部で6作のカサヴェテス映画がかかるらしいので、全部観るぞ〜。
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