翔海

グラン・トリノの翔海のレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.0
男を教えてくれたのは父親ではなく、隣人の頑固親父だった。

最愛の妻に先立たれたウォルトは少し気難しい性格をしていて家族との間に確執があった。生前の妻からの伝言でウォルトを気にしてと神父が定期的に来るようになるが彼の心の傷はいえず、朝鮮戦争の悪夢が彼を苦しめていた。周りから心配をされても振りほどいて来たウォルトだったが隣に引っ越してアジア系移民と少しづつ交友をしてゆく。家族よりも赤の他人の隣人のほうがマシと思っていたウォルトにも情が湧いてくる。隣人のタオは一度ウォルトの宝物のグラン・トリノを盗もうとしたが失敗してウォルトからノロマのレッテルを貼られる。罪の贖罪のためにウォルトの手伝いをすることになったタオを次第に認め始めたウォルトはタオを一人前の男にするために教え込む。彼らとの出会いが頑固だったウォルトの心にも次第に変化をもたらしていた。

兵役を終えた老人がアメリカ人の在るべき姿を見せてくれた。
頑固な元軍人のウォルトは自分の信念だけ貫いて生きてきた。唯一の宝物のグラン・トリノと愛犬、庭を見ながら飲むビールがあればいい。アメリカ人らしい役をこなした監督兼主役のクリント・イーストウッド。作品の題名にもなっているグラン・トリノ。彼がこの車に特別な思いを持ってこの作品を制作したのが伺える。(Wikipediaから)公開当時は、本作を俳優業最後と位置づけ今後は監督業に専念するために俳優は引退すると明かしていた。けれど、クリント・イーストウッドは今も俳優も監督も続けている。今年で91歳を迎える彼は衰えることを知らない。

クリント・イーストウッド作品はこれまでに幾つか見てきたけど、この作品は彼の思いが一番に感じられた作品だと思えた。クリント・イーストウッドの思い描く理想の人間像や暮らし、全てがこの作品に詰まっていると感じた。この作品を知るきっかけになったのが2~3年前に渋谷某所の映画BARに行った時に叔父がグラン・トリノを頼んだからである。そのBARでは映画に因んだカクテルを出してくれる。運ばれてきたグラン・トリノはアルコール度数の高い深緑色のしたカクテルだった。カクテルの見た目から渋さが滲み出て、まだ見たことの映画だったのに作品のイメージが浮かんできた。見終わった今もそのイメージと同じで驚いている。コロナが落ち着いたらまた足を運びたいものだ。
翔海

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