「火あるか?」
「・・・・・」
「ないのか?」
「・・・・・」
「それじゃあ
自分でつけるか・・・」
死に場所を探し続けて生きていた男は魂を使い切る場所を見つけます。
特別な男の特別な魂は隣に住む特別な家族を守る道具となります。車庫にある「ここぞ」という出番を待ちわびる特定なときにしか使われない特別な道具と同じように・・・。
クリント・イーストウッド演じるウォルトは、朝鮮戦争で所属部隊の他の隊員がすべて命を落としたが唯一生き残ったことでシルバースター(勲章)を与えられます。その戦争で沢山の朝鮮の子供達を殺したために、ウォルトは心の安らぐことがない日々を送っていました。
妻を失くし、三年ぶりに受けた診察の結果を、息子に電話するのですが言い出せない内に電話をきられたことで、隣人への想いを加速させていきます・・・。「家族よりも俺を理解しているモン族・・・」
そんな中、モン族の不良達に行った軽率な警告が取り返しのつかない報復となって隣の一家を襲います。
ウォルトは隣人に二度と報復がないように一人アジトへ向かい不良達と対峙します。
「それじゃあ自分でつけるか・・・」
くわえたばこのウォルトは右手をジャケットの左脇へ伸ばします。そこにはホルスターに収まる銃が・・・。
この映画は、朝鮮戦争でアメリカに加担した結果、朝鮮での生活が出来なくなりアメリカに移住せざるを得なくなってしまったモン族への理解と、隣人としての彼らの文化をアメリカ人に知らせるためつくられています。クリント・イーストウッドらしい目の付け所です。また主人公の見解として、肌の色の差別や、アメリカに進出してきた日本車に対する偏見などがでてくるのですが、多くの老人が今もこう感じている実状にもスポットをあてています。
人生には良かれと思ってしたことが、考えも及ばない結果を招くことがしばしばあります。
自分で蒔いた種が、自分一人の力で刈り取り切れないほど大きな災いになってしまうことも・・・。
隣人を自分の力で守り続けることができないことに気がついた年老いたウォルトは、法律で隣人を守る方法に気がつきます。魂と引き換えにして永遠に・・・。
ウォルトという頑固な老人の生き様(死に様?)をみせつけられます。