タケオ

コブラのタケオのレビュー・感想・評価

コブラ(1986年製作の映画)
3.5
 犯罪小説家ポーラ・ゴズリングの処女作『逃げるアヒル』(74年)を原作とした、80年代のスタローン全盛期を代表するクライム・アクション。ロス市警"ゾンビ班"に所属する荒くれ刑事「コブラ」ことマリオン・コブレッティ(シルヴェスター・スタローン)が、「ナイトスラッシャー」と呼ばれる連続殺人集団と死闘を繰り広げる姿を描く。ナイトスラッシャーに狙われるヒロインのイングリットを演じたブリジット・ニールセンは、当時のスタローンの実の妻である(『ビバリーヒルズ・コップ2』(87年)の撮影中に監督のトニー・スコットと不倫したため1987年に離婚)。本作『コブラ』(86年)は、スタローンとニールセンの数少ない夫婦共演作なのだ(と思ったら『クリード 炎の宿敵』(18年)にもちゃっかり出演。オファーしたのはスタローンだとはいえ、やはり食えない女優である)。
 実は本作の脚本は、もともとスタローンが『ビバリーヒルズ・コップ』(84年)を想定して執筆したものだった。しかし、スタローンは元の企画からコメディ色を排して『ダーティハリー 』(71年)のような硬派なクライム・アクションへと路線変更しようと発案。それに難色を示したパラマウントはスタローンを企画から降板させ、代わりにエディ・マーフィを『ビバリーヒルズ・コップ』の主演として起用した。パラマウントに却下された脚本を元に制作されたのが本作というわけだが、『ビバリーヒルズ・コップ2』がスタローンとニールセンの離婚のキッカケになったと思うと、皮肉な因果のようなものが感じられる。
 『ダーティハリー 』を意識した作品ということもあり、アンドリュー・ロビンソンにレニー・サントーニなど『ダーティハリー 』のキャストが多く出演しているのも本作の大きな特徴だ。そして何よりも、主人公マリオン・コブレッティというキャラクターの造形が素晴らしすぎる。そのあまりにもクールなビジュアルからは、「ハリー・キャラハンに負けないキャラクターを作ってやる‼︎」というスタローンの強い意気込みが感じられる。RayBanのサングラス、ホルスターにはグリップにコブラの紋章が入ったコルト・ゴールドカップナショナルマッチ、不機嫌そうにマッチを咥えたクールなタフガイ、コブラ。そんな彼が颯爽と現場に現れる冒頭シーン、そのバカバカしいほどのカッコ良さは今鑑賞しても鳥肌もの。「近づくな!爆弾で店ごと吹き飛ばすぞ‼︎」と叫ぶ強盗犯に対して、「やれよ、俺の店じゃねえ」と立板に水のごとく言い放つ。そして最後は決め台詞、「お前は病気だ、俺が薬だ」おいおい、カッコ良すぎるぜスタローン‼︎‼︎
 そんな具合に、冒頭から巨大な花火をボンボンと景気よく打ち上げてくれる作品である。これは最高の映画だ・・・と、少なくとも冒頭20分間は思わせてくれる。しかし映画が進むにつれて、だんだんと生じ始める失速感よ。派手なカーチェイスに銃撃戦と見せ場こそたくさんあるのだが、冒頭場面で立ちまくっていたエッジがどんどん画面から失われていくではないか。アクションのエッジだけでなく、台詞のキレだってなくなってくる。フレンチポテトにケチャップをかけているイングリットに向かってコブラが一言、「救命道具が必要だな、ポテトが溺れている」って、何その台詞⁉︎全然カッコよくないよスタローン‼︎‼︎
 次々と打ち上がる正四尺玉を遠望していたはずが、いつの間にか線香花火を眺めている。そんな感じの作品である。鑑賞後に残る薄〜い後味がなんだか切ない。しかし、冒頭20分間の素晴らしさはやはり否定できない。コブラの真似をしてRayBanのサングラスをかけてみたら、ドン引きするほど似合わなかったというあの過去は取り消せない。ガッカリな作品であることは確かだが、コブラというキャラクターにはまだまだ可能性が残されているはずだ。僕はそう信じている。だからスタローン、はやく続編制作してくれよ!
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