たにたに

マーティのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

マーティ(1955年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【世にも奇妙な物語】2023年28本目

マーティという平凡な男を通して、人間の価値観のズレを描きながら、結果この男の価値観もズレにズレていると思わされるゾッとする物語。

マーティは35歳にして未だ母と暮らし、精肉店で働きながら、彼女も作らず1人で寂しく過ごしている。
友人からもお客さんからも母親からも、早く彼女を作りなさい。とその話ばかり。
妹は!兄は!と、近場の人間と比べられ、耳タコなお節介で聞きたくもない世間の声に触れ、マーティは疲弊している。

そんな折、友人と出かけたクラブ先で男性に捨てられた女性に声をかけ、その魅力に虜になってしまう。
しかし、マーティは我々がイメージしている彼ではなく、とてつもなくお喋りな自分語りを永遠にしているウザい男なのである。

あれ、、この男に同情していたさっきまでの我々はいったい。。
彼をどう見ればいいんだろうか、と頭を悩ますわけだ。

しかし、お喋りな自分に反省し、友人からの突然の誘いも断って、再び彼女とも楽しくお話ししているシーンに我々は安堵をする。

母が留守の実家に連れ込んでキスをしようとするも、失敗。でも2人の間には確かに愛が生まれたようである。

翌朝ご機嫌のマーティに、彼の母は喜ぶでなくむしろ怒りを覚えている。
母は、息子を取られると思い込んでいるのだ。
いやいやいや、あんたが彼女作れと言ったんだろうがい!と思うわけですが、母も自身の姉の境遇と重ね合わせて、自分を不幸と考えていくのです。

マーティは有頂天ですが、友人からは彼女をイモだと馬鹿にされ、母親からは美人ではないとも言われる。

え、美人だと思うけど。。
そう。見ている私たちも様々なバイアスの渦中に巻き込まれて、自分の感情ではなく、世間の考える正しさに流されていくという体験をするのです。

ラスト。打ち切りが決まって無理やり終わる漫画のように、スパンと物語を終えます。
マーティのラストの発言。
「お前も良い歳なんだから、早く彼女を作れよ」と。

こうしてまた世間の意見に流された平凡な男がこの世に誕生した。

世にも奇妙な物語のようなお話です。
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