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ミツバチのささやきのHKのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.0
たしか私の学生時代に公開された記憶があるのに1973年の作品?
それだと私はまだ小学生・・・と思ったら日本公開はその12年後の1985年とわかり納得。
ということで、名作ながら今頃になって初見です。

こういう以前からタイトルを知っていながら見る機会を逸していた作品は何かキッカケがないとなかなか観ません。
今回のキッカケは久々に訪れた叔父の家に昔のTV録画のVHSテープが山ほどあるのを見つけて借りてきました。
我が家のビデオデッキも電源を入れたのは久々。
う~ん、テープもデッキも古いため画質に難ありですが贅沢は言えません。
次に借りるときはモノクロ作品をチョイスしよう。

主人公の男の子の写真は昔から何度も見ていましたが・・・え、女の子だったの?(失礼!)
つぶらな瞳、ヨコから見るとオデコと鼻の高さが一緒、とにかく映画史に残るカワイさ!
撮影時は5歳だったそうで、これ演技? 素? どちらにしても素晴らしい。
子役を混乱させないよう出演者全員の名前と役名を同じにしたとか。なるほど。
子供を描きつつも子供を使って泣かせようとしていないところに好感が持てます。
私の場合は今観て正解。公開時に見てたら寝ていたかもしれません。
今だから少しはこの映画の良さがわかる気がします。

1940年、内乱後フランコの独裁政権となったスペインが舞台。さびれた小さな村の公民館で映画が上映されます。ここでは大人にも子供にも貴重な娯楽だったのでしょう。
運ばれてきたフィルムの缶を見て子供たちが「映画の缶詰だ!」(いい表現!)とはしゃいでいます。
上映された映画は・・・『フランケンシュタイン』。
子供にとってはトラウマ級ですね。この怪物が物語にも絡んできます。

この作品が作られた頃もまだ独裁政権は続いており、政権批判は許されないためメッセージをオモテに出さずに描く象徴化という手法がとられています。
国民を働きバチや主人公のバラバラの家族に例えているのもそのひとつですが、無理にいろんな象徴を読み解こうとせず、静かな映像と子供たちを観ているだけでも満足できます。
いずれまたキレイな画面で見直したいと思います。

同じ時代背景で少女が主役という共通点を持つ『パンズ・ラビリンス』(ギレルモ・デル・トロ監督)も本作の影響を受けていそうです。
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