Angie

探偵物語のAngieのレビュー・感想・評価

探偵物語(1983年製作の映画)
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探偵ごっこ のつもりだったのに

自分でも言ってしまうほど「退屈な女子大生」の直美、自ら巻き込まれていく純情無垢で怖いもの知らずの彼女だったが、常に寂しさと切なさを背負っているように見えてしまうのはなんでだろう。お金持ちのお嬢様、かなり恵まれているはずなのに。これは「セーラー服と機関銃」でも感じた、薬師丸ひろ子が持つ最大の魅力「あどけない色気」のせいかもしれない。物語後半で寂しさについて言及するシーンがあったが、彼女は育った環境もあり孤独を抱えて、見た目とは裏腹に大人っぽい孤独を抱えていたのだ。そんな中、結局誰が依頼したかもわからない辻山との出会いは、彼女を孤独の海からすくい上げるようなものだったのだ。退屈な女子大生は面白半分で積極的に事件解決を目指すが、これは最初さえ探偵ごっこのつもりだったが、次第に孤独の埋め合わせという作業になっていく。孤独から救い上げてくれた辻山と関わることは、事件解決よりもはるかに大きな目的だったのだろう。彼女にとってそれはとても新鮮で楽しいことに違いない。しかし決まっている別れを回避できないという事実と薬師丸ひろ子の演技によって、直美の孤独感は最後まですくい上げることができない。
誰が見ても印象に残るだろう、辻山と幸子の情事を間質的に見てしまった直美の、あの表情よ。探偵ごっこなんて、のんきにはやってられないのだ。現実を直面することは大人になることと同義だろう。彼女は恋心を認識して、同時に大人という存在になる階段を急激に駆け上がっていく。あのシーンは胸を打たれた。誰しもが、あのような表情になってしまうことがあったに違いない。拒絶を経て、最後のキスシーンで彼女は成熟する。かなり生々しいディープキスで、よかった。軽く唇を合わせる程度だったら私は許せない。
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