Angie

いちご白書のAngieのネタバレレビュー・内容・結末

いちご白書(1970年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

無気力少年の目覚め

アメリカンニューシネマ。その中でも一際エネルギッシュなこの作品。学生闘争を描きながらも、一人の少年の変化にフォーカスする。だからやりきれない気持ちと共に、ヒューマンドラマ性も感じる立派な映画。ニューシネマのなかでは理性のある方なんじゃないかな。

無気力少年のサイモンはフラフラと生きている。必死に勉強して入った大学でボートを漕ぎながら街をほっつき歩く。最初は軽蔑するように周りで見ていたストライキ。目的もなく興味本位で過ごしながら、女の子に出会って惹かれながら、無気力少年は無気力のまま。革命の本質というよりは、その外見に惹かれるかのように、暴力に、声を上げることそれ自体を楽しんでいた。だからどこかやるせなさが止まらない。something in the airのメロディが彼の背中を押す。革命、みんなで成し遂げているという、そのスタイル。
だが彼がその本質に気づいてしまうのが、彼の友達の負傷がキッカケだ。そうして惨さを痛感した彼は、心の底から闘争メンバーに加わり、最大のクライマックスを迎える。

クライマックスはこれでもかと言うくらいに衝突を描く。酷い。とてもやるせない。
誰に向かっての怒りなのか。もちろん警察への怒りではない。もしかしたら大学でもないのかもしれない。自分自身への怒りなのかもしれない。若者たちは、チャンスをくれ!と言いながら、歌いながら、手を叩きながら、抵抗する。こうやって側からみると、ただ酷い。だがこうやって成長したサイモンがリンダを守るように、そして必死に抵抗する姿であることは、なぜか心の底から応援してしまうのだ。形式にとらわれていた彼の独り立ちともいえよう、あのクライマックスのエネルギーは何よりも輝いていた。その闘争が意味をなさなくても、彼の輝きは忘れずにいなければいけない。

斬新なモンタージュ。ぐるぐると回るカメラが特徴的。安定せず常に回ってるような、浮いてるような、非現実的な環境を表すかのように。これが現実だとは認めない。物事はぐるぐる回り、革命はぐるぐる回っていく。カメラもフリーでブレブレで、でもそこがいい。遠くからサイモンを捉える時の切なさ。彼の哀愁感がまたたまらない。
この映画は学生闘争ではなくて、サイモンの映画なのだ。
Angie

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