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スピード・レーサーのMOCOのレビュー・感想・評価

スピード・レーサー(2008年製作の映画)
3.0
「車はな、ただの鉄じゃない
生き物なんだ。
 彼女(車)が何を欲しているか
よく聞くんだ。
目を閉じて聞いてみろ」(レックス)

 幼かった頃、白いパンツの足の長い少年・三船 剛を主人公にしたタツノコプロによる『マッハGoGoGo』というカーレースの漫画がTV放映されていて、私は夢中で観ていました。その作品の大半は前編・後編に別れ、二週に渡る作りがされていて、現在のように見逃し配信で見ることができなかったために、後編を見逃すのは死ぬほど後悔するものでした。

 タツノコプロは1965年の『宇宙エース』を皮切りに 『マッハGoGoGo(1967年)』『おらぁグズラだど(1967年)』『ハクション大魔王 (1969年)』『昆虫物語 みなしごハッチ(1970年) 』『いなかっぺ大将(1970年) 』『カバトット(1971年 ) 』と、私の幼少期のアニメ観賞歴には欠かすことの出来ないアニメーションを世に送り込んだアニメ制作会社です。
 その後は観ていないのですが『科学忍者隊ガッチャマン (1972年)』『新造人間キャシャーン (1973年)』『タイムボカン(1975年) 』『ヤッターマン(1977年)』『よろしくメカドック(1984年 )』『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(1984年・映画 )』『新世紀エヴァンゲリオン(1995年)』等々、現代でも話題になる作品を作り続けた会社です。

 朧に記憶がある実写版TVドラマ『忍者部隊月光(1964年)』も創業者・吉田竜夫氏の原作漫画が基になっていました。

 タツノコプロが送り出すアニメはキャラクターデザイン・声優のチョイス・テーマソングが優れていて、社名と吉田竜夫氏の名前、トレードマークには深い印象がありました。

 中でもマッハ号のステアリング内のスイッチボタンに組み込まれた
Aボタン=走行中はジャンプに使用するオートジャッキ
Bボタン=キャタピラの要素を持つベルトタイヤ
Cボタン=走行の邪魔になる木を切り倒す丸ノコ・チョッパー
Dボタン=降雨用の防弾仕様風防・ディフェンサー
Eボタン= 赤外線灯・イブニングアイ。
Fボタン=水中走行時の酸素供給
Gボタン= ツバメ型小型飛行カメラ・ギズモ号の発射
には、ワクワクしたものでした(作品の後半は一部変更がありました)。

 そんな『マッハGoGoGo』はアメリカでは『スピードレーサー』というタイトルで公開され、子供の頃その魅力に取りつかれていたウォシャウスキー姉妹(公開当時は兄弟)はいつの日かこの映画を撮影するのが夢だったそうです。


 幼いころ歳の離れた兄レックスをレースの事故で亡くしたスピード・レーサーは、父親のレーサーモーターズ社のオリジナルカー・マッハ6でサンダーヘッドレースウェイのレースで優勝します。スピードの実績と才能に目をつけたローヤルトン工業の社長アーノルドはスピードの父親の小さな会社への融資を餌に、スピードをチームローヤルトンに誘うのですが、断られると「カーレースの優勝には会社の利権が絡んでいて、すべてのレースは最初から優勝者が決まっていた」と、過去から現在に受け継がれているカーレースにまつわる汚れた実態を語り「お前は次のフジ・ヘレキシコン・サーキットのレースでは完走すらできなくなり、お前の父親は設計盗用で起訴されることになる」と脅されます。

 そしてレースの途中マッハ6は接触され大破し、スピードは違反装置を使用した嫌疑をかけられ、父親の会社は身に覚えのない起訴をされ信用はガタガタになってしまいます。

 失意のレーサー一家を訪ねたのはローヤルトン社の不正を追い続ける捜査局のディレクター警部と覆面レーサーXでした。
 最近になり組織を裏切り始めたレーサーのデジョ・トゴカーンの持つ証拠があればアーノルドを追い込め、組織の壊滅が図れるのですが、証拠の明け渡し条件は、次のクロスカントリーレースでデジョが優勝者となり父親のトゴカーン社が復活してデジョの一家が安心して暮らせることなのです。捜査局はレーサーにデジョのチームでレースに参加する要請をしてきたのです。

 レーサーの父親は猛反対します。もともとクロスカントリーに参加するのはクズのレーサーばかりで、さらにそのカーサ・クリストのクロスカントリーレースは兄レックスが事故死したレースなのです・・・。

 アーノルドはライバルのミスター・武者 (真田広之)が買収したいトゴカーン社の引き渡しを引き換え条件に、新型GRXに組み込まれるIPトランスポーダーの独占販売と需要を伸ばすために必要なグランプリレースの優勝を裏取引します。

 スピードは父親には内緒でローヤルトン社の不正を暴くため『死の試練』と呼ばれる2大大陸と3つの気候地帯を走る5,000kmのクロスカントリーに挑みます。

 マッハ6を失っているスピードは車庫に飾られたマッハ5(マッハ号)を捜査当局に持ち込み
Aボタンにはジャンプ
Bボタンにディフェンサー
Cボタンにタイヤシールド
Dボタンに緊急スペアタイヤ
Eボタンにカッター(丸ノコ)
Fボタンにスパイク
Gボタンにギズモ
が組み込まれます。

 スピードは兄レックスが、なぜ家出したのか、命を失くすかもしれないクロスカントリーに参加したのかを知り、覆面レーサーXは兄レックスではないかと疑問を持ちます。

 スピードと覆面レーサーXはデジョ・トゴカーンとチームを組みカーサ・クリスト・クロスカントリーレースに参加します。やがてレースの参加は父親にも知られ、駆けつけた父親の手でマッハ5は改造で失ったバランスを取り戻します。

 デジョのチームはマッハ5の活躍で優勝するのですが、デジョは父親の会社の株価の吊り上げが目的で捜査局を騙していて最初から証拠など持っていなかったことを知ります。

 レーサーはデジョの妹を通して次のグランプリレースの正当な出場権を手にいれます。
 レーサーはアーノルドの言う「優勝者が決まっているレース」から自らの力で優勝をもぎ取りレース界の仕組みを変えようというのです。レーサー一家は急遽マッハ6を作り直し・・・。

 すでにトゴカーン社の買い取りで予定外の出費をさせられたアーノルドはレーサーの優勝を阻止するために審判員の目が届かないTV中継の映らないところで反則を犯しレーサーを・・・。

 実写+カラフルなグラフィックス+アニメーション、さらに二重露出・三重露出で繰り出されるスピード感と映像の奥行きはかって観たことのない躍動感のある映像を観せてくれます。
 スピード・レーサーのマッハ5は三船剛のマッハ号と同じホワイト、覆面レーサーのイエローとブラックのツートーンカラーのマシンも原作のイメージが大切にされています。
 ギズモの活躍シーンが無いため続編を期待していたのですが制作されることはありませんでした。

 そういえばTVの覆面レーサーの声優は愛川欽也氏がされていました。付け加えると映画のスピード・レーサーの吹替えは赤西仁氏がとても下手くそにされています。

 ステアリングで横滑りや回転するマシンの動きは昔流行したスリックカートを思い起こさせてくれスリックカートが懐かしくなります。

 エンドロールで日本語で流れる「マッハGOGOGO」のオープニングソング(ほんの一部です)は嬉しくなってしまいます。

 それにしても原作もそうなのですが、この一家の長男と三男の年齢は一体どれだけ離れているのでしょう?この奥さん一体何歳の時に長男を産んだのでしょう?
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