ゼロ

スカーフェイスのゼロのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
4.3
ギャング映画の古典にして、最高傑作。

本作は1983年に製作された古い映画です。監督は、ブライアン・デ・パルマ氏、主演はアル・パチーノ氏となっています。

内容としては、キューバからアメリカにやってきた青年トニー・モンタナが、コカインの密売でのし上がっていくお話です。

上映時間が170分と長い作品ではありますが、最後まで飽きさせない熱量があります。またギャング映画として、残虐な殺し、可愛い美女、組織の乗っ取り、裏切り、そして華麗なる死と全ての要素が入っています。

本作が面白いと感じたのは、主人公・トニー・モンタナの在り方です。モンタナは、初めは飲食店の皿洗いをしていて、夢を抱いていました。金持ちになり、高級車を乗り回し、綺麗な姉ちゃんをはべらしたい。物語が進むにつれ、モンタナの夢は叶い、誰もが認める金持ちになります。しかし、全てを手に入れたモンタナは満足していませんでした。

振り返ってみるとモンタナの夢って、誰かの夢を手に入れただけであり、自分の夢じゃなかった。贅沢をしたいという夢は、キューバ時代からの相棒・マニー・リベラのもの。綺麗な美女は、フランク・ロペス(モンタナのボス)の情婦。コカインの密売を始めたのは、フランク・ロペス。

全てを手に入れたと思っていたモンタナですが、実は自分というものを持っておらず、学も教養もないチンピラであるため、夢を実現させていても常にイライラし、金金金と口にしている下品な奴。

最後の屋敷で銃撃戦は圧巻であり、ギャングとして有終の美を飾っていましたが、そこには愛する妻の姿はなく、愛していた妹には殺されそうになり、長年付き合ってきた相棒は自ら殺し、仲間と呼べる人間は誰もいなかった。まさにトニー・モンタナの姿は、全て虚構でできており、その姿が当時のアメリカの情勢は反映していたと思うと、皮肉が効いているな…と感じました。アメリカンドリームを手に入れても、何も手に入らないよってね。

名作と呼ばれる作品は、今観ても面白いのだなと感じることができた作品でした。
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