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七つの顔のMOCOのレビュー・感想・評価

七つの顔(1946年製作の映画)
3.0
「ある時は私立探偵、ある時は競馬師、ある時は画家、またある時は片目の運転手、ある時はインドの魔術師、またある時は老警官。しかしてその実体は、正義と真実の使徒、藤村大造だ」

 劇場の歌手清川みどりが公演中の劇場から、お面を被った2人組に誘拐され身に付けていたダイヤの首飾を強奪後解放された事件を解決する探偵多羅尾伴内の活躍をえがく映画です。
 変装を繰り返しなが複雑な事件を完璧な推理で解決していくのですが、解決までは短絡です。戦後の舗装されていない道路を多羅尾伴内がオープンカーで犯人の車を追いかけながらの銃撃戦や、屋敷の秘密などみどころのある作品です。

 口に手を当てて「あぁあ〰️」とジョニー・ワイズミラーのターザンの真似をしたり、「ハイヨー!シルバー」と馬に鞭を入れる真似をしたり、ゴジラごっこをしたりと、幼い頃の私や私の友達は、一緒に遊んだことはなかったのですが、おなじ映画やテレビに影響された遊びをしていました。18才の頃友達全員が「あぁあ〰️」も「ハイヨー!シルバー」も口にしていた思い出があったのですが「ハイヨー!シルバー」の出所は誰も解りませんでした。あのころは携帯で簡単に調べるような時代ではありませんでした。
 
「ある時は私立探偵、ある時は競馬師、ある時は画家、またある時は片目の運転手・・・」というセリフも子供の頃から知ってはいるもののその出所は全く知りませんでした。少なくとも林家木久蔵は物真似と分かっていても、それが何のセリフかは考えたこともありませんでした。それを知ったのは後々少年マガジンに掲載された小池一夫氏&石森章太郎氏の『七つの顔を持つ男 多羅尾伴内』がきっかけでした。終戦直後のこの映画を観る年代ではないので、おそらく周りの大人の誰かが口にしているのを聞いていたのでしょう。
 
 1946年(昭和21年)日本を占領していたGHQは、時代劇は軍国主義を煽り立てるという理由で時代劇の制作を禁止しました。そんな中、時代劇を支えてきた大スター片岡千恵蔵さんのために書き下ろされたのが名探偵「多羅尾伴内」の『七つの顔』です。日本刀を拳銃に持ち替え、立ち回りは銃撃戦に置き換えられた映画は大ヒットとなり後にシリーズ化・テレビ化され「七つの顔」をタイムリーに劇場鑑賞された方には熱烈なファンの方が多いようですがこの映画シリーズに対する評論家の酷評が原因で片岡千恵蔵は大映と決別しました。ちゃちなストーリーが批判の中心だったのですが、後に小林旭さんや石原裕次郎さんが同じような設定の日本なのに拳銃をドンパチする無国籍映画が人気を博したのですから、当時の映画評論家の頭が固かったのか生真面目過ぎるのか全く変な話です。
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