射抜かれた。理屈とか何かを考える必要はない、圧倒的な映像の力。人間を、人生を、生きるということを裸のまま描いている。
モノクロ、シネマスコープ、台詞なし。演技というより生活そのもの。だからなのか、あまりに自然で、すっと感情移入して、心を揺さぶられる。こういう感覚は初めてかもしれない。
本作についてはウィキペディアにある新藤兼人監督の言葉がすべてだと思う。
<僕の映画人としての理念はね、映画は映像である、映像で押して、押しまくっていけば、必ず真実はつかめる。それでわざわざせりふを抜いた映画なんですよ。俳優が農民の演技をやるんじゃなくて、島に農民の夫婦が住んでいて、その記録映画を撮る、というように作りたかった。— 新藤兼人、中国新聞2009年9月1日付>
生涯暫定ベスト。映画館の大スクリーンでないと魅力が落ちるから「午前十時の映画祭」でかかっているうちにもう1回観ておこうと思う。