このレビューはネタバレを含みます
ジョギング中に心臓マヒで急逝した最愛の夫が生まれ変わって、再婚のタイミングに10歳の男の子になって登場してくる、というお話。
演出はジョナサン・グレイザー。PVやCMでは超有名なディレクターだが、映画はこれ以外にも何か撮っているのだろうか。作劇方法や映像設計、それにリズム感もタッチも、ある意味ハリウッド・スタイルの映像手法を完全に否定している。画を引っ張るだけ引っ張って、間を強調することで独特の空気感を作り、それが映画全体のトーンをシックにさせている。オカルト的なリーインカーネーションにもならず、下半身にまつわる逸話が多い割には品があるのは、この演出スタイルのおかげだろう。
女優陣も素晴らしい。ニコール・キッドマンが壊れていく感じがいいし、アン・ヘッシュの意地悪い感じもいい。それにローレン・バコールが出ているのには驚いた。この年、80歳。妙に色気があるし、役者の風格が他を圧倒している。
中盤まではとてもスムースにドラマは進んでいたのに、後半からおかしくなってくる。最大のエラーは結末の処理だろう。
こういう愛の形としてのリーインカーネーションは、ピュアな人の想いが強いからこそ生まれ変わる、という前提がないと成立しない。熱烈に愛していた愛人が別に居たり、最愛の奥さんが二人だけで生活したいと告白した時に“僕はショーンじゃない…”と平気でコクったり、何と女はその後再婚を諦めた相手に平気で復縁をせがみ、何も無かったかのように結婚するし、そしてまたその結婚式でよろめいちゃったりのハラホレヒレハレ展開。
こんな安直なエンディングはないだろう。一気に冷めてしまった。