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捜索者のいののレビュー・感想・評価

捜索者(1956年製作の映画)
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公開時、興行的には成功しなかったそうだ。でもその後、傑作と高く評価され、現在ではフォード監督の西部劇の代表作となっているらしい。2008年、アメリカ映画協会によって「最も偉大な西部劇映画第1位」に選出されたとのこと。フォード監督はこの映画を「家族の一員になることの出来なかった一匹狼の悲劇」と評している。(以上、wiki参照)


わたしは、今作がヴィム・ヴェンダースの推し映画であり、『パリ、テキサス』にも今作の影響が色濃く反映されていることを知り鑑賞した次第。年の離れた男性ふたりが、とらわれている女性を捜索する物語、とみればたしかに両作の繋がりを感じることができる。でも、どうしてかあまり今作に惹かれなかった。この映画は1956年制作。舞台は1868年のテキサス。映画は、制作時のこととか、描かれた時代とかを念頭に置き、現在の視点からのみ鑑賞することはよろしくないのかもしれないけれど、ジョン・ウェインが演じるイーサンという人物の、先住民への差別意識が気になってしまって。西部劇も時代の変遷などがあって、ちゃんと制作順に鑑賞していくのが結局のところ近道なのだと思いつつ、作品数も扱うテーマも、奥に潜む視点も膨大でこれはちょっとわたしの手には負えないぞとようやくそれをうっすらと認識しはじめたところです(わたしはいつも理解が遅い)。


兄一家を殺されたイーサン(ジョン・ウェイン)の復讐心と、白人に息子2人を殺されたコマンチ族の酋長スカーの復讐心が合わせ鏡のように呼応する。イーサンと行動を共にする青年マーティン(1/8先住民の血が流れている)が、イーサンが持つ偏見に基づく行動を抑える役割を果たしている。ということを考えると、これはなかなか素晴らしい作品なのかもしれない。とも思い始めたところでもあります。



メモ
・ベンチごとひっくり返るマーティン(2度ある)



〈追記〉2024.01.20
『トイ・ストーリー2』・・・映画の終盤、ウッディは新フロンティアの象徴的舞台である空港で、「おうちがいちばん」の変奏と言える台詞を口にする・・・「おうちに帰ろう(Let’s go home.)」。これは、『捜索者』のジョン・ウェインの有名な台詞でもある。付言すれば、もちろん古典期の西部劇のヒーローたちも家への郷愁を抱いてきたが、それはあくまで冒険をするからこそである。
(川本徹『フロンティアをこえて ニュー・ウェスタン映画論』森話社、2023年、263-264頁)



〈追記②〉2024.02.08
「ベン・ジョンソンのことを考えていいかな?」と私は訊ねてみた。
「ベン・ジョンソン?」
「ジョン・フォードの古い映画に出てくる乗馬のうまい俳優さ。すごくきれいに馬に乗るんだ」
(村上春樹『世界の終りとハード・ボイルド・ワンダーランド(上)』新潮文庫、2020年、442頁)
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