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時計じかけのオレンジのabeeのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.0
【比較する余地などない圧倒的世界観】

名作再鑑賞。

久しぶりに鑑賞しました。
改めて観てみてやっぱりキューブリックの映画はクセが強い‼︎‼︎
しかし、彼の作品の中では割と分かりやすい作品です。

まず演技のクセが強い。
「シャイニング」が良い例ですが、オーバーアクションでどちらかというと舞台っぽい演出なんですよね。悪く言えば大げさ。それが彼の作品の個性でもあるわけです。
物語のキーマンでもあるあの作家など最早顔芸。

続いて美術面。これは言うまでもなく変態色が強く万人向けでは有りません。

音楽の使い方も。オープニングは「メアリー女王の葬送曲」で不穏な雰囲気で始まったかと思えば、エンディングは「雨に唄えば」で愉快に終わる。

主人公・アレックスも終始違う人物なのではと思うほどキャラクターがころころ変わる。それは物語の性質上当然ですが。

しかし、私がこの作品が好きなのはそういった見てくれの部分ではなく、物語が持つメッセージ。
人間の尊厳、自由、それは極悪人だろうと善人であろうと関係なくみな平等に持っている…
ということを伝えたいのかと思いきや、根底にあるのは「意志」の大切さだと思うんですよ。

脳ミソをぐちゃぐちゃに掻き混ぜようと、「変わりたい」「こういう人間になりたい」という強い意志がなければどれだけ外から力を加えようと根本は変わらないということなんだと思います。

しかし、それでも「習慣」は少し人間を変えることがある。
それはアレックスの喋り方に良く出ていて、刑務所を出たあとは強制されることでは無いのに、初めて会う人や歳上の人物に対して「〜,sir.」を付けて喋ってるんですね。
非常に興味深いです。

圧倒的で個性的な性と暴力の描写はもちろん記憶に残る芸術。
「時計じかけのオレンジ」の世界でのみ広がるスラング。
圧倒的な世界観です。

ということで名作であることは明白。美術、音楽、編集、演技、演出。どれをとってもやはり圧倒的。

私、原作も読んだんですが、文字だけだとここまで変態的には感じませんでした。
キューブリックの手にかかればストーリーに大きな違いがなくとも毛色が大きく違ってくるのですね。
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