平野レミゼラブル

フォーン・ブースの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

フォーン・ブース(2002年製作の映画)
4.0
「人間て面白いよな、誰がかけたのか分からないのに、電話が鳴ったらついつい出てしまう」

電話ボックスの中で何者かに狙撃銃で狙われたコリン・ファレルが、電話で狙撃犯から脅迫を受け続けるサスペンス映画。
80分間舞台は電話ボックスの中のみ、しかもリアルタイムと連動しているというとんでもない縛りを設けているにも関わらず面白さを保ち続けるという秀逸な作品でもある。

狙撃犯が声と狙撃銃だけで、ボックス内のファレルを追い詰めていく緊迫感がまた凄い。
「こうすればいいじゃん」っていう逃げ道を次の瞬間には潰していく徹底っぷりなため、劇中のファレルと観客の心情がシンクロして絶望に襲われていく。

狙撃犯も彼が『社会悪』と認定した者をこれまで制裁してきたと嘯き、話し合いの余地がなさそうな存在なのがまた不気味。
ボックス外で絡んできたチンピラを射殺して、ファレルをボックスに籠城する殺人犯に仕立てあげる知能プレイによって、完全に詰みの状態にまで持ち込んで行く。
ある意味この映画における『神』そのものの風格である。

ただこの映画、あくまでサスペンスでありミステリではないため、犯人探しをしてしまうと肩透かしを食らうのでそこは注意。
サスペンスとしては、制約が多い中で顔の見えぬ犯人があらゆる手段を用いてハラハラさせていくので一級品も一級品である。

また本作は吹き替えだと狙撃犯の声が大塚明夫で、あのダンディボイスが時に凄み、時にお茶らけ、時に宥めすかすように80分間耳元でずっと囁いてくるため断然吹き替え版をオススメする。
大塚明夫催眠ボイスが欲しい夜には本作を枕元で流し続けるといいだろう。

オススメ!!