特集上映ハッピー・ハマグチ・アワーにて久々の再鑑賞。3度目かな。
最初に観たのは「濱口竜介プロスペクティヴ」(2013)で、あまりの面白さに腰を抜かしたものです。しかも東京藝術大学大学院の修了作品なんですよね。なんという大器ぶり。以来彼の作品の追っかけに。
濱口監督作品のなかでは最もセリフの多い作品ではなかろうか。そして恋愛群像劇のように見えるけど、そこに留まらない広がりも備えています。
ちょうど折り返しのあたりに教師であるカホの授業シーンが配置されてて、そこで暴力についての話で生徒たちと激しい議論に発展する。そしてそれ以降、この物語の見え方が変わるんですね。
前半は各々が自分で考え選んできた人生についての話なんだけど、後半はその人生にはこの世界を支配するシステムのようなものの影響が色濃く見えてくる。
会話劇の面白さ以上に、自分はこの構造の妙に強く惹かれます。
もうひとつはだれもが指摘するカホとケンイチロウの早朝散歩シーン。この長回しの力強さたるや。
海辺の工場群を映す固定カメラに、はじめは会話だけが聞こえていて、二人が徐々にフレームインしてくる。ケンイチロウがカホの好きなところをひとつづつ挙げるセリフもいいですね。その後にトモヤに全く同じことを言わせる濱口監督のシニカルさは余計と思ったけど笑。
それにしてもキャスティングが神すぎですよね。まるで当て書きしたかのような俳優陣。
それまでも何度か見かけていた河井青葉さんの熱烈なファンになったのは、本作がきっかけなのでした。