マサキシンペイ

BIUTIFUL ビューティフルのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
4.2
一応これでイニャリトゥの長編は全て見たことになる。この監督にはハズレがない。過去作のような複雑な構成ではないが、些細な会話を聞き逃すと展開が見えなくなるので、かえって話の筋を理解するのに集中力を要した。

タイトルの「BIUTIFUL」という綴りは、「美しい」と「貧しい」のダブルミーニングとして気の利いたスペルミスなので、邦題の「ビューティフル」がかなり頂けない。邦題から「BEAUTIFUL」を思い描いてから見たせいで重要な場面の意図を初見で見逃してしまった。「ビウチフル」くらいにして欲しい。

ハビエル・バルデム演じる、移民二世(?)のウスバルは、自分と同じような移民や、不法滞在者に職業を斡旋することで生計を立て二人の幼い子供を養っているが、その生活は厳しい。そんな中、既に手遅れの癌が見つかり、2ヶ月の余命宣告を受ける。
父親が死ねば子供たちはどうなるのか。痛いほどにわかる。ウスバル自身も母親のお腹の中に居るときに父親を亡くしているからだ。
何か子供たちに残そうと思っても、自分の仕事は汚く貧しい。残された時間、愛を込めて抱きしめてあげることしか…。

「貧しい」生活が「美しい」雪原となって骨身にしみるような悲しい映画だった。
マサキシンペイ

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