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この森で、天使はバスを降りたのHKのレビュー・感想・評価

3.8
原題は“The Spitfire Grill”で、これは主人公が働くことになる食堂の名前。
その由来はこの店のかつての主人が第二次大戦中にイギリス軍の戦闘機スピットファイヤーのパイロットだったから。
今回ばかりは邦題の方に完全に軍配が上がります。

でも、いわゆる背中に羽の生えた天使が登場するファンタジー作品ではありません。
主人公はまだ少女と言ってもいいくらいの若い女性ですが、刑務所で5年の刑期を終え、初めて訪れる小さな町で再出発を始めようとします。

主人公が再出発の町に選ぶギリアドは聖書ゆかりの地なんだとか。
単なるホノボノした田舎町の生活風景が描かれるだけでなく、主人公の痛ましい過去や食堂の老婦人の過去、その甥夫婦との関係、ベトナム戦争の爪痕などいろいろと考えさせられますが、それらが押しつけがましくなく、割とサラリと描かれます。

3人の女性(母親)が中心となる物語であり、出て来る男はみんな非力(もしくは悪役)なので、監督か脚本が女性かもと思ったら男性(TV『冒険野郎マクガイバー』のプロデューサー!)でした。
脚本や編集がちょっと雑に感じるところが惜しいものの、私は好きな作品でした。

主人公のアリソン・エリオット(当時26歳)は私は過去に2本ほど出演作を見ているようですが記憶はなし。
主人公と仲良くなる主婦のマーシャ・ゲイ・ハーデン(当時37歳)はアカデミー助演女優賞も獲っている女優ですが、やはり過去に出演作を数本観ているはずが記憶なし。

唯一わかるのは食堂の老主人エレン・バーステイン(当時64歳)くらいですが、人が良すぎず悪すぎずの気難しい老婦人役をさすがのベテランの貫録で演じています。
この人、wikiによると今は90歳ですが、アル・パチーノやハーベイ・カイテルと共にアクターズスタジオの学長をしているんだとか。

本作は後にオフブロードウェイでミュージカル化もされており、日本でも上演されたそうです。
お勧めしていただいた“ひゅうどんこ”さん、ありがとうございました。
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