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緋牡丹博徒のbackpackerのレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒(1968年製作の映画)
4.0
"女だてらに鉄火の渡世!男まさりの仁義と啖呵、修羅場を二つに斬って割る!!"
"受けられますか横笛のドス 地獄・極楽どっちでも親分さんのお望み次第 お竜が道先案内つとめましょ"

東映仁侠映画の黄金期を代表し、女侠客・藤純子の人気を確たるものにした画期的作品。
近年の富司純子時代の作品でしかお目にかかっていなかったので、22歳という若さで主演を務める美しい姿には、ホントにびっくりしてしまいました。
本作の大ヒットを受け、『日本女侠伝シリーズ』と『女渡世人シリーズ』にも主演し、一挙にスターダムを駆けあがり、現在まで活躍されているというんですから、人に歴史ありですね。

全く事前知識を仕入れることなく鑑賞したため、「特別出演 高倉健」の字がオープニングでドドン!と出たときは、ぶっ飛びそうになりました。邦画知識の少なさ故に、こういったサプライズは割と頻繁に起きますが、久しぶりにワクワクが止まらなくなりましたね。
健さん出演の仁侠映画は、本数の多さもあって全然把握できていないので、ちゃんと調べて消化していかないとなぁ……。

ストーリーは、仇討ちものを題材として、男性神話的な旅の構造に則った堅実な作りですが、これを女性の主人公にやらせるところがミソですね。
主人公緋牡丹のお竜こと矢野竜子(演:藤純子)が、父殺しの仇として探す人物=本作最大の悪党大阪「千成組」二代目の加倉井(演:大木実)と、偶然出会いお竜を助けた旅の渡世人・片桐直治(演:高倉健)との関係性というサブプロットも、メインプロットを大いに盛り上げてくれます。
クライマックスのカチコミ。爆薬バンバン爆発しながら繰り広げられた因縁の戦いが、結局お竜メインから男同士の斬り結びで決着してしまったのが、些か残念ではあったものの、女仁侠路線という博打における担保という意味合いもあったのかなぁと考えれば、しょうがないのかもしれませんね。
クライマックスシーンでは、お竜の子分フグ新が滅多切りにされ、幸せな子ども時代のお嬢さん(=お竜)を思い出しながら死んでいったり、片手に火縄さらしに爆薬の富士松&お竜の殴りこみという、画ぢから溢れる名場面も目白押し。

右肩に咲く緋牡丹の入れ墨を露にして、啖呵を切るお竜。
寡黙に語らず全てを被ろうとする、漢っぷりのよい片桐。
若山富三郎演じる四国道後温泉の熊寅組組長・熊坂虎吉の、間抜けですっとぼけたコメディリリーフの好演。
何から何まで印象深い、大変楽しいエンターテイメント作品でした。
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