るるびっち

赤穂浪士のるるびっちのレビュー・感想・評価

赤穂浪士(1961年製作の映画)
3.4
顔面映画。
スター総出演で顔芸。その競い合いで話はどうでも良い。
片岡千恵蔵・市川右太衛門・中村(萬屋)錦之助・東千代之介・大川橋蔵・大友柳太朗、若き日の松方弘樹。
この頃の日本人は泣くことが美徳だったのか、男たちがよく泣く。
誰が一番うまく泣くかの、泣き芸合戦である。
大きな顔で大きな目玉を向いて泣く。顔面芸が凄まじい。
この時代の映画の作り方は、今とちょっと違っていて興味深い。
現在は忠臣蔵の粗筋を知らない人も多いが、昔は桃太郎や浦島太郎のように観客全員周知のこと。だから筋よりも、見せ場に力が入れられている。
観客が先の展開を知っているからこそ成り立つ演出が多い。

浅野内匠頭が吉良を切りつけて切腹という悲劇に陥る。
それを前提にして芝居している。つまりこの人、この後悲劇になるよね、悲しいな~という目線で作っている。
家来も、浅野の友人も悲劇を予感している。
友人は何があっても怒るなよと忠告するし、浅野自身も家来の忠義ぶりに涙して、家来のためにも意地悪されても絶対怒らないと約束する。
その愛情溢れるさまが、この先の悲劇を知っている観客の心を揺さぶる泣きモードに作ってあるのだ。
だから、先の展開を知らなければ何故こんなにシンミリしているのか解らない。知ってる人限定の作り方だ。

これは今の映画と違う。
今の映画は、展開を読めないように作りこむことが多い。

互いの心中も、ストーリーを分かっているから了解済みなのである。
だから、向き合っても何も言わない。
言わずもがな・・・言わなくてもお前の気持ちを解っている。
そんな演出が多い。
だから心中の説明台詞はあまり無い。
ただ、見つめ合うだけ。オッサン同士で。
当時の二大スター、片岡千恵蔵と市川右太衛門がやる。
何も言わず、顔だけで伝わるような顔芸合戦をやる。
二人とも顔がバカでかく、デカ顔がカットバックになる。
どっちがデカいか競い合ってるようだ。
無言で、ただデカい目玉を向き合って涙を浮かべあう。またまた、どっちが早く泣けるか競い合うように・・・
だから、話を知らない人はこの時の彼らの心中も解らないので(そんなの知ってる前提で作ってますから)ただ顔のデカいオッサンが涙を浮かべて睨み合う、意味不明のシーンになる。
歌舞伎の大向こうのように、「千恵蔵、デカいデカい」「右太衛門、もっと顏デカい」「デッカチャンだよ!!」と声を掛けて観るのが正しい鑑賞方法です。
(流行りの誹謗中傷ではありません。昔の役者は顔がデカいんです。現代人の3倍はある・・・ホントホント💦)
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