クレセント

望郷のクレセントのレビュー・感想・評価

望郷(1937年製作の映画)
3.6
どうも君に惚れ込んだらしい。パリを感じるんだ。君といると風景が違って見える。夢を見ている心地がして。遠くから音が聞こえてくるんだ。メトロだ。パリのメトロさ。君は宝石や絹で誘惑するが、感じるのはメトロの音やカフェオレの匂いなんだ。前は何をしてた? 前って?宝石の前さ。宝石の夢を見てた。カスバを出れないの?なぜ聞く?警察が待ち構えている。奴らは獲物を逃さない。出たらお終いさ。でも君に会うためならここを出るさ。ペペ・ル・モコはそう言って彼女を抱きしめた。そう、彼女の向こうにパリの景色が浮かぶ。思い出すのは故郷のパリ。そして今は逃れ逃れてアルジェのカスバ。帰りたい。もう一度だけ。彼女の髪に顔をうずめると呟いた。何の香り?彼女は笑って言った。パリのメトロよ。しばらくしてペペ・ル・モコはカスバを出る決心をした。それが警察の罠だと知りながら。
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