Jaya

しとやかな獣のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

しとやかな獣(1962年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

したたかにタカりまくる前田一家がさらに上手な幸枝に翻弄されるお話。ピノサク・バブリスタとは思い切った名前。

舞台が全く動かないなか、構図がキマっていて、飽きさせない画作りが凄かったです。不気味すぎる夕焼けやら、階段を抽象化したシーンやら。ずっと上っていた幸枝が最後は下っていたのは印象的。

他人に寄生することで貧困を抜け出した前田一家。貧困を思い出すカットは唐突すぎて違和感もありましたが効果的でもありました。神谷の自殺の示唆からの抽象化された表現も素晴らしかったです。破綻の始まりを告げそうなサイレン。

幸枝の飄々として、かつ世渡りの腹が据わっている感じが素晴らしい。金に卑しい父や、もはや慇懃無礼に近い母、割り切り方がたくましい友子もいい演技してましたが、実だけは怒鳴り散らすだけでイマイチでした。

戦後という当時の一般庶民の現実を、欲を金に集約させることで、見事に抽象化して描き出したような名作でした。
Jaya

Jaya