きまぐれ熊

パルプ・フィクションのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
4.5
これは...面白かったな。
タランティーノ作品3つ目だけど、エンタメ性が飛び抜けてて楽しみやすい。

レザボアドックスと同様時系列シャッフルによって群像劇を見せていく訳だけど、必然性が非常に高い。
というのも時系列順に並べると本作で感じられるカタルシスは全く感じられないだろうと思えるから。

とくにサミュエルLジャクソン演じるジュールスの心境の変化はこの構成じゃないと観客の心情が追いつかないだろうし、伏線回収の様なギミックにもなっているが、これが時系列順だとどちらも全く機能しないだろう。
2周目を見るとジュールスのその後も垣間見えることが分かり、シャッフルによる味わいが増すという非常に計算された構成だ。

キャラクターの生死も予想が付かないものが多い上、時系列で追っていかないので、そこでキャラクターの人生が消失した、という喪失感を感じさせにくいのも面白い。作中で死んでも映画を見直す限りはずっと生きている様に錯覚する。

暴力や葛藤に対して意義を見出せそうな気もするし、エンタメとしてただ金と女と暴力のストーリーを楽しむだけでも正しい様な気もするし、懐の深い雰囲気があるな。


ちなみにチェンソーマンOP巡りとして観た訳ですが、これもシーンのチョイスがとてもいいですね。

映画終盤、ジュールスがエゼキエル25章17節に対しての感じ方が変わった、という独白のシーン。
もちろんモチーフ的に聖書はバチバチに絡んでるのでそういう意味でのシーンチョイスとも取れる。

最善だと思う事を今は出来てなくても努力はしたい。というセリフはラストオブアス 2の最後を思い出す。
これを岸辺に言わせるのは含みがあって面白いですね。漫画原作で重なる様なシーンは思い当たらないけど、1部終盤における岸辺の心情として当て込んだのではと想像が拡がる。
きまぐれ熊

きまぐれ熊