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パルプ・フィクションのYYamadaのレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
4.5
なぜ?【アカデミー未受賞の大傑作】
第67回 (1994) アカデミー作品ノミネート
◆同年のアカデミー作品賞作品
 『フォレスト・ガンプ』

〈見処〉懐かしくも新しい映画の代名詞!
①寡作のタランティーノ 最高傑作!
・クエンティン・タランティーノの第二回監督作品。第47回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高作品賞)を受賞、その年のアカデミー賞では、脚本賞を受賞。
・タイトルの「パルプ」は、1940年代に流行した、短編犯罪小説が掲載された安紙の大衆向け雑誌。
・また、パルプの表紙レイアウトのような、タバコを片手に横たわるユマ・サーマンのポスターは、懐かしくも新しい、大変有名なビジュアル。
・本作はわずか800万ドルの製作費ながら、前監督作『レザボアドックス』の評判を受け、ブルース・ウィリスら複数スターは、こぞって俳優組合規定の最低賃金+興収連動インセンティブの契約で起用。最終的に世界興収2億ドルを超える大ヒットにより、出演者たちがは十分なギャランティの還元を受けた。
・また、本作によりサミュエル・L・ジャクソンとユマサーマンはスター俳優に。ジョン・トラボルタもビッグ・カムバックを果たしているが、本作最大のスターは監督であるタランティーノだろう。
・タラ作品特有の「無駄な長会話」「暖色が印象的な色彩」「章立てのストーリー」「ジャンル無視のクセの強いBGM数々」は、既に本作にて確立出来ており、その密度は高い「最高傑作」だと思う。

②「時系列混在」映画の草分け
・本作は、ファミレスにおけるプロローグ/エピローグにくわえ、3つのストーリー「ヴィンセント・ベガとマーセルス・ウォレスの妻」「金時計」「ボニーの一件」を織り交ぜて構成。
・『ゴッドファーザーPartⅡ』など、過去の作品でも複数の時系列が絡む作品はあったが、本作の場合、3つのストーリー、計15パートに対して、時系列をバラバラに前後入り乱れる複雑な構成で描く。
・それでも、鑑賞者が迷子にならずついていけるのは「強烈なキャラクター設定で人物像を強く刷り込む」「なぜTシャツ姿に?容姿の変貌をストーリーに反映」「各章ごとにストーリーが魅力的で、オムニバス作品としても成立している」からだと思う。
・本作以降『メメント』のような傑作に影響を与え、反対に、近年の『ナイブズアウト』のように、容姿(髪型)だけで時系列を分別させようとする乱暴な演出作を生み出す起点となった、功罪ある作品だろう。
・本作を見直して、下手くそな時系列映画に対し、腹立たしさを覚えるくらい、本作の脚本は画期的な「発明」である。

③Pフィクション都市伝説
ネット議事で面白いトリビア記事がありました。
1. スーツケースには、マフィアのボス、ウォレスの「魂」が入っている。
2.登場人物がトイレで用を足す時間が短ければ、物語は大きく異なっていた。
3. 「エゼキエル書25章17説」は実際の聖書にはない。
4. アパートの壁の銃弾の穴が始めからあったのは、意図的なもの。
5. 作中のユマサーマン幻のプロト作品は、『キル・ビル』。

④なぜ、作品賞をとれなかったか?
・本作のストーリーが、暴力的かつブラックユーモアに過ぎる。また、タランティーノ特有のオタク気質の作風が、アカデミー作品賞の品位にそぐわないと評価されたのであろうか?
・同年のアカデミー作品賞に輝く『フォレストガンプ』は、本作の相対的な存在であり、優等生的な同作に世論が傾くのは、想像に難しくない。
・同年は前述の2作品に加え、『ショーシャンクの空に』もノミネート作にラインナップ。映画史に残る三つ巴の戦いにあったが、四半世紀たった現在でも、新鮮さを維持し、定期的に鑑賞したくなる点は、本作がトップだと思う。
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