東京キネマ

ダーティハリー3の東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

ダーティハリー3(1976年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

今回の敵はリベラルの代表ヒッピー集団、と思いきや実はテロリスト集団、しかしその実体はただの金銭目的のチンピラ集団だった、というのが大筋のストーリーです。

【1】でリベラル、【2】で呼び戻しで右翼、そしてまた【3】になってリベラルと、振り子のごとく敵キャラを変えるというのがこのシリーズのミソながら、今回はちょっとキャラが弱過ぎですね。ここらへんはシリーズものの宿命なんでしょうが、というより前2作が良く出来過ぎてるんで、どうしても比較しちゃうんですよね。

ショッキングな殺人シーンが殆どありませんし、44マグナムをぶっ放してスカッとするのもトップの銀行強盗をやっつけるシーンだけです。ボスキャラを倒すシーンにしてもロケット砲でお茶を濁していますんで、まあここらへんはナチだ、右翼チックだと散々非難されたことによる自主規制ってことなんでしょう。それに、今回は不思議なことにハリー・キャラハンの決め台詞がありません。

しかしね、今回再見して気付いたんですが、ダイヤローグが結構洒落ているんですよ。つまり、アクション中心から葛藤ドラマに比重を置いて台詞を練って作っているんですね。

強盗事件を解決したものの店に損害を与えたことで警部のマッコイが激怒、ハリーは人事部に左遷されます。その時のハリーの台詞。“To parsonnel ? That's for assholes” (人事課だ? そんなのはオカマの仕事だ) それを受けてマッコイは“私はそこに10年居たんだ!”と答えた時のハリーの「!?」の顔!。笑えます。

女性の私服警官をもっと重用しろと市から派遣された面接官にキレたハリーが“座談会をやってる訳じゃないんだ。拳銃を突きつけられた時にどうするかが問題なんだ。ケツに穴が開くんだぞ!”と言うと、その後ハリーの相棒になる女性警官ケイトが“It's my ass !”と話を中断させるシーンなんかも結構可笑しいです。

一方的な警部マッコイの命令に頭にきたハリー。“一つ言っていいか?”“言ってみろ”“あんたの口は臭う!”と捨て台詞。このシーンは明確に覚えてますね。英語では“Your mouthwash ain't making it !”って言ってます。面白い言い方するもんですね。

全体を通してハリー・キャラハンの個性は弱くなってきていますが、キラキラしたシーンが沢山あるんで退屈しません。

オープニングでホットパンツの姉ちゃんがヒッチハイクでウェスタンガスの車を盗むまでのシーンなんか感心するほど良く出来てますし、敵のアジトの風俗店に行って、75ドルでスペシャル・サービスが受けられるわよ、と言われて入るとダッチワイフだった、なんてのも洒落がきいてます。

メイキングで驚いたのは、クリント・イーストウッドが現場でがんがん演出に口出ししていることです。毎回監督が変わるってのは、もしかするとこういったことが背景にあるのかも知れません。

今回の映画でも強烈な印象を残している黒人俳優のアルバート・ポップウェルですが、【1】では銀行強盗、【2】ではポン引き、今回はボスキャラと袂を分けた過激派のリーダー役をやっています。何故この人が毎回役を変えて出てくるのか不思議だったんですが、この人実はクリント・イーストウッドと友達なんですね。もちろん役者としての資質が抜群だからなんでしょうが、これもクリント・イーストウッドのオーダーなんでしょう。

『父親たちの星条旗』でスパイク・リーに“なんで黒人兵士が出てこないんだ”と言われた時、“うっせえよ! 黙ってろ!”と答えたというのは有名な話ですが、クリント・イーストウッドの中には明確な黒人像があるんですよね。だから黒人だったら誰でも良いっていうことじゃなくて、役者としての存在感がなけりゃ絶対ダメなんですよ。クリント・イーストウッドと言えば、お馴染みのモーガン・フリーマンを連想してしまいますが、アルバート・ポップウェルにしても然りで、この二人を超える黒人俳優なんてそう簡単に居ませんからね。こういったスパイク・リーみたいな黒人重用原理主義者みたいな人が結局黒人像を歪めているようなもんですから、良く言ったねクリントさん、って本音で思います。

また脱線してしまいましたが、評判の悪い【3】でも、私にとっては充分楽しめる映画でした。