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スラムドッグ$ミリオネアのBeSiのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.8
いかにしてインドに住む一人の"スラムドッグ"はミリオネアへと登りつめたのか。その理由は、全て彼の人生の記憶にあった。今作は「LION ライオン 25年目のただいま」と同様にインドの貧困層の問題に視点を当てて物語を描いている。しかしその視点の当て方が格段に違う。ダニー・ボイルだからこそ生み出せる味と言って良いだろう。主人公の幼少期というと、イスラム教とヒンドゥー教の争いが激化している真っ只中。更には、人身売買の減少しない過酷な現実の前に立たされている。ヒンドゥー至上主義を掲げる集団によるイスラム教徒迫害の恐ろしさや、人々の心に根強く棲みついているカースト意識のために、根絶が困難とされる人身売買の危険性を生々しく描き、主人公の半生がどれだけ壮絶なものだったかを訴えかけてくる。またそれを「トレインスポッティング」を彷彿とさせる音楽の使い方によって、シリアスかつポップに表現しているところに深く感心した。......そして主人公ジャマールは激動の時代を生き抜いた運命ゆえにミリオネアへ生まれ変わったのであった。
アカデミー賞作品賞と他8部門受賞、ゴールデングローブ賞4冠を獲得した今作は、100万とある映画の中で唯一無二。あまりに美しく、ほとばしる生命力と狂おしい愛に直に感じられる。デヴ・パテルの鮮烈なデビュー作にして最高傑作。素晴らしい。
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