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ミイラ怪人の呪いのhorahukiのレビュー・感想・評価

ミイラ怪人の呪い(1967年製作の映画)
3.3
消えてしまったカリスたん…

ハマーフィルムによるミイラ映画第三弾であり、同社のミイラ“男”映画の最終作。前作の『怪奇ミイラ男』と同じく、今作もカリスたん不在という悲しさ…(T . T)今回はミイラ男として元奴隷頭のプレムとかいうハゲのオッサンが出てきます。誰だよ…。

王家の墓を荒らす者を、先祖代々続く墓守一族がミイラを使役して消していくという、ユニバーサルから続くお馴染みの設定を引き継いでいる本作。イギリスとエジプトの間の侵略国・被侵略国の関係性を根本に起きつつも、前作と同様でそちらにはあまり重きを置いておらず、自分の名声と命のことしか考えていない資産家の滑稽な転落を主軸に据えている。

今回の調査の出資者であるプレストンが最悪のクソ野郎。エジプトの地で行方不明となった調査隊のことを気にかけもしない。調査隊には自分の息子もいるのに「大金を出したのだから無事でないと困る」と、息子を含めた隊員の命よりも調査の継続と自分の評判の方を気にしている。プレストンの頭にあるのは常に名声のみ。そこには家族ですら抜け落ちており、ミイラによる殺人が始まってからは妻と息子を残してイギリスに帰ろうとする始末。しかもそれに悪びれることもなければ、引け目を感じている素振りすら見せない。

自身の家族すら蔑ろにし金と名声と権力にしがみつくプレストンと、死してなお王の墓を守るという自身の使命を全うしようとするミイラ乃至は墓守一族を対比させ、そこにイギリスとエジプトの精神性のようなものを重ね合わせる意図だったのだろうと思うのですが、あまり噛み合ってるようには思えなかったのが残念でした。

ただ、そこにあるのは「イギリス人だから」「エジプト人だから」という外見上・表面上の問題ではなく、人としての精神性。だからこそ彼らをエジプト警察が見逃したのだろうし、ミイラに立ち向かうことができたのだと思います。そして原題にもなっているshroud。布という意味ですが、王子に「布をかける」という行為そのものが彼らの精神性の変化を強く表現している。そして本作を製作したのがイギリスの製作会社ハマープロだということは、やはり自国への戒め的な意味合いを持たせたかったのだろうと思います。

大英博物館に展示されてるものを参考に製作されたという本作のマスクはどこか可愛らしさというかアホらしさが感じられて面白かったし、ゆっくりと目を開いていくシーンのインパクトが圧倒的に凄かった。無機質で生命を感じられない能面のような顔が、少しずつ目を開いていくことにより、奥底の深淵を覗き込むような引き込まれるほどの不気味さを感じました。やってることは全然違うんだけど、『シェラ・デ・コブレの幽霊』の伝説となっているあのシーンと感覚的には近かったように思います。

水晶や現像液の反射が目となる見せ方は面白かったし、残虐なシーンを直接見せずに敵意丸出しで笑う目のドアップでそこに映り込む惨劇を想像させることによる演出は好きでした。でもその他はあんまり良いとこなかったかな〜。ジョンギリング監督が自身の作品の中でワーストだと語るのも納得。私は嫌いじゃないですけどね。代表作の『吸血ゾンビ』と『蛇女の脅怖』も見たいです♫
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