平野レミゼラブル

ありふれた事件の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

ありふれた事件(1992年製作の映画)
3.1
殺人鬼ベンの凶行の数々を撮影クルーが追っていくモキュメンタリー形式の作品。
作中の世界観は謎が多く、何故マジモンの殺人鬼のドキュメンタリー映画なんか撮ろうと思ったのか?そもそもどっから殺人鬼を見つけ出してきたのか?撮った映像をどうするつもりだったのか?などの疑問への回答は一切無い。
まあベンちゃんの商売仇にも、撮影クルーがついてたし割と殺人ドキュメンタリーが身近な題材なそういう世界観なんだろう。
この虚構の在り方が本作の「味」となっている。

上記の通り数々の疑問点はあるが、何故殺人鬼ベンちゃんは家族にも秘密にしている自身の殺人を記録することに文句を言わないのか?についての回答だけは簡単だ。

A.ベンちゃんは自己顕示欲の強いダメ人間だから

そうこのベンちゃん、殺人の美学を語りながら乾いた殺人を続けるのだけれども全く格好良くない。
カメラを向けられれば芸術家を気取るもののすぐに醜態を晒す。
高尚な話をしているようだが、中身がまるでなくただ意識高い系を気取っているだけ。
意気揚々とボクシングに臨むもののスパークリング一発で入院してしまった時とか笑ってしまった。
その癖、家族や恋人の前では猫被って大人しいもんだから、ただの中二病耽美系の痛い奴である。

そんなダサい奴だから殺人を続けていくんだろうなっていう現実感と、そんな奴を何故かカメラが追っているという虚構との境目ギリギリをよく攻めた作品だ。