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バットマン フォーエヴァーのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
世間的評価は芳しくないものの、決して嫌いになれない、むしろ、シューマッカー監督版バットマンは結構好きなシリーズです。
理由は明白。軽妙な娯楽映画として、ニコニコしながら見ていられるから。というか、近年のバッツは暗い!暗すぎる!!
「一番楽しいバットマン映画は『LEGOバットマン・ムービー』でしょ」と考えていることからも、親和性が高いのは明らかなわけですが。

2022年の『ザ・バットマン』は、完全に精神を病んだ青年としてのブルース・ウェインが登場しました。彼の闇の深さと呼応するように、ゴッサムシティも陰鬱で暗雲たちこめる闇の世界となりました。
いやー、暗い。ダークナイト三部作よりも数段くらい。そもそも陽の光が差すシーンが全然ないんですから、そりゃ暗くて当たり前かもしれませんが。

でも、ちょっと待ってくださいよ。
バットマンって、いつの間にこんな根暗のサイコになっちゃったんでしょうか?
コミック史に詳しいわけではない為断言できませんが、近年のバッツは暗すぎますよ。
最低限「スーパーリッチ」ってドヤ顔で言えるベン・アフレック版バッツくらい、暗い過去はあるものの陽の世界に身を置いてる感が欲しいんです。あと、裕福故の余裕感。
「こいつ根暗だけど、ハイソサエティのボンボンとして下地は確たるものがあんだよなぁ」という自然な振る舞いも欲しいところ。
でも、何はともあれ、多少は明るい感じが欲しいんです。別にブルースがそうでなくてもいい、せめて作風だけでも陽気成分足してはくれんか!?


……ということで、そんな要求にピッタリなのが、「バットスーツに乳首をつけた」でお馴染みジョエル・シュマッカー版のシリーズなわけで、記念すべきシリーズ一作目が本作『バットマン フォーエバー』。

犯罪と喧騒に満ちた狂気のトンデモ都市ゴッサム。
真っ黒な出で立ちで一人戦うバットマン。
彼に相対するのは、極彩色の魔神・怪人・狂人たち。
街そのものもネオン色に輝き、道ゆく人からもどこかパーティ気分が漂います。
登場するのヴィランも素晴らしい人選。
一人目は二面性の極み、トゥー・フェイス(演:トミー・リー・ジョーンズ)。
彼は、自分の半身が爛れた時にバッツが助けてくれなかったことを恨んで恨んで恨みまくって、今はとにかくバッツぶっ殺したくてたまらないという狂愛の人。襲撃やら暴動やらを起こすのも、ひとえにバッツを殺す為。愛されてんなー、バッツ。
二人目は天才発明家にして謎々大好きナード、リドラーことエドワード・ニグマ(演:ジム・キャリー)。
こいつもこいつで、ブルース・ウェインに偏執的な愛をみせ、彼に裏切られたと勝手に思い込んだ逆恨みから、犯罪者の仲間入りを果たします。バッツ=ブルース・ウェインと自力で導き出す執念は、本当に凄いですね。愛されてんなー、バッツ。

このヴィランたちの破茶滅茶なお遊びと、それを彩る妖艶な色彩世界は、とんでもないぶっ飛び具合です。ドラァグクイーンのレイブパーティみたいな有様です。
このキチガイワールドを作り出した監督の嗜好が如実に感じられるのが、身体のラインをやたらエロく見せつけるバットスーツ&ロビンスーツ。
ファッション業界出身で、衣裳デザイナーでもあるシュマッカー監督が、公表していたゲイという自身の構成要素を反映させていたんだと思います。作品世界にあってるし、スマートでカッコいいし、筋肉質な有機性もあって、いいと思うんだけどなぁー。「乳首ついてる」問題は、見る人の好み次第でしょう。私は気にならないので、全く問題なし!


あまり作品について触れませんでしたが、こういう雰囲気のバットマン映画が、もっと見たいなぁというのが本音です。
能天気に見てられるバットマンなんて許されない!という殺伐とした風潮、はやくなくなってくれんかなぁ……。
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