前作『キル・ビル vol.1』では、あえて現実感を排して観念や理想のなかのカッコよさの映像化を試み、そしてそれに成功していたように思いますが、今作では前作にみられたカッコよさへの純粋な追求、理想への熱量が少し薄れていたように感じました。キル・ビルシリーズの魅力は日本のバトル漫画をオマージュしたようなある種のチープさも伴ったアクションシーン、BGMや効果音、展開の明快さによる、みるものを飽きさせないテンポのよさ、つまり熱量の出所のわかりやすさにあると考えていましたが、今作にはあまりそれらはみられず、代わりに静と動のメリハリ、現実感を帯びた演出が多用され、控えめな印象を受けました。今回主人公が狙うのは、それまでのターゲットと違い、特別な感情を抱くビルです。前作との映画から受ける印象の違いは主人公のあらゆる感情が複雑に絡み合って、愛憎の様相を呈していることをよく表していると思いましたが、個人的にキル・ビルシリーズに求めているものはシンプルで観念的なカッコよさであるため、少し期待とはズレていた作品でした。
