オシリー

万引き家族のオシリーのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ひととひとの、繋がり方の話だと思いました。外側の、社会的な繋がりばかりが重視されている現況のなか、同じ傷、技や感覚、金、或いは盗みという一方的な関係の結び方によって繋がる在り方を示しています。社会的な言語ではこの家族を認めることは出来ませんが、これでしか繋がり得ない、救い得ないものがあるということでしょう。本来は血の繋がりや戸籍上の繋がりと同じくらい、それらの繋がり方も大切にされるべきなのです。外側も内側も、両方、疎かにされることがあってはならない。戸籍という外側だけで娘と繋がっていたゆりの母はゆりに「服買ってあげるからこっちへ来なさい」と言いながら虐待を繰り返していました。ゆりを連れ帰った万引き家族はゆりが着ていた服を焼いて新しい服を与えます。服という外側を変えたことにより家族の一員となり、ゆりの内側も変化したことを表していると考えます。そして、事情聴取の際に、警察が「あなたはゆりちゃんからなんと呼ばれていましたか?」と呼び方という外側の繋がりばかり重視していることに対し、治は祥太に名字という外側ではなく名前という個人による繋がりを示唆していることなど、対構造が非常に丁寧に描かれていて感嘆させられました。このように、社会的な繋がりはなくとも、それぞれの繋がり方で絆を深めあっていた家族ですが、やはり社会はこれを認めてくれはしません。結局ゆりは虐待をされていた母のもとに帰されてしまいます。しかし、最後に外で遊びながら、ふと空を見上げて「あっ」と何かをみつけます。そのときゆりがみたのは、この映画をみた私たちなのではないかと、思わざるを得ないのです。
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