オシリー

カメラを止めるな!のオシリーのネタバレレビュー・内容・結末

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭みていると、「カット入らないな…」ということに気付きます。カットのない映像が30分ほど続き、ところどころに違和感がありつつも、これはすごいことをしているなという感想を抱きます。その後の展開で、この映像が、劇中の実験的な映画であることが明かされ、その制作背景へと移行していきますが、これは四重(ゾンビ映画を撮影している映画→撮影中に本物のゾンビが出てくるという設定の映画→カットを入れない実験的な映画である→劇中の映画であることが判明)の入れ子式構造であり、映画にみせかけたドキュメンタリーにみせかけた映画という理解が出来ます。これにより鑑賞者は3つの視点を持ち、非常に豊かな映像体験をすることになります。そして特筆すべきは最初の映像における、伏線ともいうべき『違和感』の回収と制作背景の結び付けの巧みさです。随所に散りばめられた違和感は、「腹を壊した役者が撮影を離脱し繋ぎのためにシーンが間延びする」、「カメラマンが腰をいわして交代し撮り方が変わる」、「足だけゾンビメイクして次の指示を役者に伝えるスタッフ」など撮影中に起きたトラブルの結果として見事に回収されています。それは全体を通して、美の体現者的なスピード感で進んでおり、普段は美の創造者、言いかえればあまり光の当たらないなかで制作を行う裏方のスタッフに光をあてて、制作を行うひとすべてがかっこいいんだというようなメッセージに感じました。それとともに、やはりなにかひとつの物事をみんなで成し遂げる尊さ、限られた条件下でもやってやるんだという熱量に満ちた、作品のプレイヤー側にはより響く傑作だと思いました。
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