オシリー

セッションのオシリーのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.5
ここで描かれているのはある師弟関係の純粋なセッション。目的は至ってシンプルだ。フレッチャーは教授として、執拗に罵倒や叱責を繰り返し、常軌を逸した指導を学生に行う。ニーマンは殊更に厳しい目を向けられ次第に追い込まれていく。しかしフレッチャーの学生に対する態度の全ては師としての深い愛情の裏返しであり、ニーマンへの集中攻撃は大きな期待の表れである。ニーマンはフレッチャーの指導に懸命に食らいつくも、遂には反発し、二人のテンポは未だ噛み合わない。挫折したニーマンは一度音楽から離れるが、やがてやはり自分には音楽しかないことに気づきフレッチャーの元へ戻る。フレッチャーはまだニーマンの才能を諦めていなかった。ここでもまた、純粋なまでに通った筋で以ってフレッチャーはニーマンの才能を引き出そうとする。そして、ニーマンの反応はフレッチャーの期待を越える。二人のテンポが噛み合った。音と音は全力で叫び、争い、いがみ合い、ぶつかり合い、そして繋がる。音は師弟にとっての唯一のコミュニケーションだ。激しくぶつかり合うことで繋がった音は静寂のなかで空間を切り裂き、時間を凍てつかせ、心臓を打つ。訪れる完璧なテンポの瞬間。セッションが始まった。
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