このレビューはネタバレを含みます
フェルディナンとマリアンヌの仮初めの愛の逃避行のお話。絵本の字幕が「カーツーン」でしたが「ハルツーム」では?女王が本物と知って驚き。
滅茶苦茶に作家性の高い映像の連発。強烈な色彩感覚。更に逃避行に入ってからは、明らかに即興性の高い演出の数々ながら、物語や映像に強い一貫性が保たせる技量が途轍もない。恐ろしくハマりまくっている劇伴も素晴らしすぎます。
マリアンヌに良いように騙されたフェルディナン。マリアンヌとの愛は初めから虚ろながら、フェルディナンは世情への失望からそれに縋るようにも見えます。画面に溢れる戦争のイメージは、反戦のみには留まらないよう。しかしそれでも徐々に破綻が見える虚構的な愛。文字通りのピエロたるフェルディナン。
フェルディナンとマリアンヌの佇まいを含めた演技がえげつない美しさ。画面に横溢する寂寥感とも相まって、画にならないカットが一切ない。全てのコマが素晴らしい。シーンとしても、とんでもなくセンスに溢れていて心に突き刺さるものばかりでした。
多くのシーンに無関係の第三者を紛れ込ませている意図は何だろう?寓話性の演出力が凄まじく、ラストの美しさと滑稽さが完璧に融合した爆死に至るまで、ひたすらに目を奪われ続けました。
時代性を背景に愛の悲哀と滑稽を、全てにおいて完璧なほどの完成度と独自性で余りに美しく描ききった大傑作でした。