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アメイジング・スパイダーマンのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
マーク・ウェブ監督版『アメイジング・スパイダーマン』(以下、アメスパ)シリーズ第1作。

サム・ライミ監督版(以下、無印)の6部作構想が崩壊したため、「スパイダーマン映画が5年9か月作られなかった場合、ソニーはスパイダーマンの映画化権を失う」というMarvelとの契約により「スパイダーマン映画を新たに作らなくてはならない」状況に陥ったソニーは、無印三部作を忘れたかのように、アメスパシリーズを立ち上げます。(スパイダーマン映画の大まかな歴史は無印第1作『スパイダーマン』のレビューに記載してありますので、ご参考まで。)

このリブートでは、無印にて描き切った「スパイダーマンの誕生物語」を(多少の違いはあれど)ほぼ同様に焼き直しました。
その結果がどういうものだったか。ファンはどのように感じたのか。
時がたち、MCUがぶち上げた"マルチバース"によって、無印及びアメスパの立ち位置は流動的になりましたが、公開当時はそれは酷いものでした。
アメスパは、無印三部作のどの作品と比較しても、興行収入が劣るという、残念極まる結果となったのです(とは言え十分に儲かりましたが)。

本作に対し、皆さん色々と思うことがあるでしょうが、個人的には、ヴィランにあまり惹かれなかったことが一番残念。
私は、悪役が正義のヒーローよりも魅力的で丁寧に作られた映画が好きで、スーパーヒーロー映画ではそれを特に強く求めています。
無印のヴィランはどれも大変味わい深かったのですが、本作のリザードにはそこまで強い魅力を感じず……デザインもちょっとね。
コナーズ博士=リザードはコミックス最古参のヴィランの一人で、そのキャラクター自体は大変魅力的。無印時代は、大学のコナーズ教授とし登場していました。無印続三部作があれば、もしかしたらリザードとして登場していたのかもしれませんよね。
ただ、本作でのコナーズ博士=リザードは"ピーターの父親の失踪"におけるオズコープの暗部に関連したドラマも担っていることもあり、本人それ自体の掘り下げが物足らず、クライマックスのバトルもイマイチ。

あとは、絵作りという点でも、無印程のインパクトあるシーンを作り出せなかったことが残念です。サム・ライミ監督はコミック2万5千冊のコレクターでもあり、スパイダーマンには精通した人物だったので、スパイディをカッコよく見せる絵作りがバッチリこなせていましたが、本作には(ラストのキメッキメのポーズを除いて)パンチある一コマがありません。スパイディのスイングもかなーり微妙。というのも、本作は『アバター』から始まった3D映画ブームの渦中にて作られた映画だったため、3Dでキマる画角で作られているんです。これが、普通に今見ると超微妙……。
マーク・ウェブ監督に、サム・ライミ監督レベルのコミックに対する造詣を求めたり、アクション映画出身監督じゃないのにアクションを撮らせるという点からも、色々求めるのは酷ですが、落差が激しいことは否定できません。


とは言え、本作が酷評されるような駄作であるとは決して思いません。アンドリュー・ガーフィールド演じるピーター・パーカーは個人的には好きですし、特に次作の終わり方があまりに良すぎることもあって、本作も度々見ていたりします。
また、先にも記載しましたが、MCU(&DCEU)によるマルチバース計画によって、新たな局面に至ったアメコミ・スーパーヒーロー映画界隈においては、過去作の評価が最新作によって変わる可能性も存分にあるので、本作も新たな視点を加味し評価されていくと思っています。

何はともあれ、スパイダーマン映画が続々作られていく現代、幸せだなぁ。
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