140字プロレス鶴見辰吾ジラ

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.5
【Lust of us】

世界の異変に気がついてからの異様な演出とホラー調。アニメ映画史上に残る怪作にして傑作。何度も何度も同じ日を繰り返し、何度幾度試みても抜け出せない今日。文化祭の1日前に見た世界と世界の真実を知ってしまうハリアーから見た全貌が素晴らし過ぎる。ゾクゾクが止まらない。数々のコンテンツの最初の一滴となった本作の不可思議さは時代が流れても未だに鮮烈、それはまさに夢の如し。パッチワークのように張り巡らされるフィクションの繋ぎ合わせと、諸星あたるとラムのついては離れぬ自由および欲望。

押井守作品を本格的に見たのはこれが初めてだが、明らかに高橋留美子原作から大きく外れた異質なのはひと目にしてわかる。冒頭のドタバタにも凝縮された特撮コンテンツやこれ見よがしに戦闘機や戦車を混入させるエゴイズム。謎を散りばめ不穏に不穏を重ねる夜闇と雨のシークエンスは抜群に居心地が悪い。真実の全貌が明るみになってから続く欲望と世界の終焉に何故か感じるパラダイス。

クライマックスに現実を引き受けるために脱出を果たさんと足掻く中で、夢また夢の階層を駆けるシーンは、悪夢そのものなのだが劇場版というジャックナイフを取り出した一度切りの大仰は、諸星あたるの恋愛哲学と無垢に近いラムの寝顔と触れぬ唇で終幕する。

何たる所業か!

私もかつて夢の中で目覚め再び夢の中、そして夢の中にて目覚めるを5回ほど繰り返した経験がある。あれは怖ろしかった。そして何より夢を見る行為自体が時間軸を変貌させることは後にクリストファー・ノーランの「インセプション」で経験することになるが、夢見る行為が光の速さを凌駕したような時間軸や空間、世界軸をも揺るがす、それこそ夢のようなエネルギーを内包していることに夢を持たざるを得ない。