MOCO

大殺陣 雄呂血のMOCOのレビュー・感想・評価

大殺陣 雄呂血(1966年製作の映画)
4.5
「貴様(小布施拓馬)が背後から斬るような武士でないこと俺は信じる。弟伝七郎殺害の下手人、貴様ではない。その証拠をこの目でしかと見た。しかし俺にも武士の意地は捨てられん。岩代藩の武士の面目にかけて 斬る!」

 1925年に公開された阪東妻三郎主演「雄呂血」の話を大幅に変更して市川雷蔵を主演に撮影した1966年の映画です。「雄呂血」に比べるとストーリーはしっかりして、悲劇性も増しています。

 信州水無月藩の井坂道場に道場破りに訪れた岩代藩の男を師範が留守であるためお引き取り願った師範代小布施拓馬(市川雷蔵)であったが、男に馬鹿にされた思いから家老の息子が人気のないところで後ろから男を切りつけてしまいます。男は馬上で命を落とし亡骸となって藩に帰ります。
 後ろから切りつける卑劣な行いに藩のとり潰しを怖れた家老は息子の謀叛を隠し、名案を真壁半太夫に託します。半太夫は娘波江(八千草薫)の婚約者である道場の師範代 小布施拓馬に一時的に下手人となり一年ほど姿をくらますよう頼みます。その一年の間に岩代藩とは手打にする約束をしました。
 他言無用の話は半太夫の甥十郎太には襖ごしに聞かれてしまい小布施は「たいへんなことになったなぁ」と声をかけられます。
 約束の一年が近づいたある日、半太夫は心労からか突然倒れ他界してしまいます。
 一年後、半太夫を訪ねた小布施は半太夫の急死を驚き、当時の約束の証明を十郎太に求めるのですが、十郎太は真実を語らず「知らぬ」と言い放ちます。
 水無月藩は藩を守るため小布施を早急に処分する必要があり、十郎太は波江を自分のものにしたかったのです。
 水無月藩の武士に囲まれた小布施は命からがら逃げ出すのですが藩からは上意討ちの命が出、岩代藩からは下手人として、また町で役人を切ったことから手配人として追われることになります。

 父親が約束を果たせなかった謝罪のため小布施を探しに旅に出た波江は、女郎宿の主に捕まり・・・。

 用心棒に成り下がった小布施は雇い主仏の五郎蔵の息のかかった女郎宿に連れていかれ、そこで波江に出会います(時間経過が短く、対面時に悲壮感がないことから波江は客をとった事は無いように思われます)。
 女郎宿への誘いは賞金目当ての仏の五郎蔵の罠でした、小布施は五郎蔵一家と戦い五郎蔵を返り討ちにするのですが、女郎宿の外には役人・水無月藩の侍・岩島藩の侍およそ200人が取り巻いていたのです。

 十手、捕縄、六尺棒、さすまた、梯子、戸板、大八車・・・必死でとらえようとする役人、名誉のため命を奪おうとする二つの藩の侍達との闘いは壮絶です。「雄呂血」と比較されることは必至、素晴らしい出来のモノクロ映画です。
MOCO

MOCO