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ジュブナイルのMOCOのレビュー・感想・評価

ジュブナイル(2000年製作の映画)
2.5
「テトラ祐介に会った。
テトラ待っていた」


 2000年の夏・・・
坂本祐介、木下岬(鈴木 杏)、大野秀隆、松岡俊也の四人の子供たちは課外学習のキャンプ場で何かが墜落する衝撃音と光の原因を探しに出かけ、森の中の小さなクレーターの中で言葉を話すソフトボールほどの大きさの球体ロボットを見つけます。
 ロボットは「テトラ」と名乗り祐介との出会いを待ち望んでいたかのように話し、科学の得意な祐介はみんなと話し合った末テトラを自宅に持って帰ります。

 祐介の部屋は4人の溜まり場になり、テトラはみんなが持ち寄った鉄屑や廃棄された機械の部品を使い自ら胴体を作り自立歩行するようになります。

 その頃、一体の宇宙人が彼らの街に現れ、偶然岬の従姉の大学生の容姿をコピーして人間社会に紛れ込みます。

 テトラがインターネットをすることを望むため4人は、神埼ラヂオ商会(電器店)の息子(香取慎吾氏)が留守の内に部屋に忍び込むのですが予想よりも早くに帰宅してしまいテトラのコンピューターアクセスは叶いませんでした。
 しかし、この不法侵入で4人は神埼と親しくなり街の噂では変わり者の神埼は、実は凄い科学者だったことを知ります。

 神埼は4人に自分が研究している『タイムトラベル』の初歩的な実験を披露すると、小さなワームホールを利用して岬が描いた絵を遠くへ移動させ、電車で4人を山奥の移動先の森へ向かいます。
 その場所には岬が描いた絵があるのですが、そこは4人がテトラに出会った小さなクレーターだったのです。

「僕たちは神埼が実験で移動した『テトラ』を勝手に持って行ってしまった・・・」そう思った祐介は神埼に謝罪すると「随分成長してしまったけど・・・」とリュックに隠し持っていたテトラを取り出すのですが、神埼はテトラを初めて見たと言います。

 神埼ラヂオ商会に戻ったテトラは神埼のコンピューターを使いインターネットをはじめ、祐介の自宅に戻ると祐介のプレーステーション2に大型ロボットを使うゲームを書き込み、祐介にロボットの名前をつけさせます。
 テトラは「ガンゲリオン」と名付けられたロボットの操作方法を祐介に教えるのですが、その夜どこかに行ってしまいます。

 テトラが向かったのは、深夜のロボット工学研究所、テトラはそこで大量の部品を調達します。

 4人は行方不明のテトラのために再び神埼を訪ねるのですが、宇宙人は邪魔になる岬の従姉を拉致し、さらに神埼を拉致して神埼になりすまし・・・。

 宇宙人の狙いはテトラの排除だと知った岬は神埼に容姿を変えた宇宙人に液体窒素を浴びせて宇宙人を冷凍にし、神埼を取り返します。
 5人は宇宙人が所持していた小さな三角錐の道具が学校のプールに溜まった水をあっという間に吸い込むのを目撃します。

 その夜、地球の上空に浮かぶ巨大な三角錐の写真がニュースで公開され、神埼の計算では地球の海水は三角錐に全て奪われてしまうのです。そうなると地球の生態系は・・・。

 神埼は宇宙人と会話するために宇宙人を解凍するのですが、岬を連れ去られ、テトラを要求されます。

 テトラはロボット工学研究所で調達した大量の部品を使い祐介に与えたシミュレーションゲームのガンゲリオンの実物大のロボットを制作し祐介のところへ戻ってきます。
 祐介は岬を取り戻すためにテトラと共にガンゲリオンに乗り込みます。

 神埼は岬の従姉を取り戻し、祐介は宇宙人の巨大三角錐を破壊して岬を連れて帰るのですが、テトラは宇宙人から祐介を守るために被弾して、その機能を停止することになってしまいます。
 テトラの記憶媒体は無傷で残るのですが、それはまだこの世には存在しないもので、祐介はきっといつの日かテトラを治してみせると誓いをたてるのですが・・・。

 やがて時は流れ祐介たちは大人になり、テトラに使われていた記憶媒体がある企業で開発され、神埼のタイムマシンも完成に近づき・・・。


 この映画を初めて観た時、正直「日本人の監督で物真似でもこんなカメラワークをする監督が出てきたんだ」と思いました。「リターナー」を観たときも「このアングルって『あの映画』だよなー」ってシーンが多くて「何となくジュブナイルににてるなー」と思って調べたら同一監督のデビュー作と2作目だった記憶があります。
 どこかで観たようなストーリーと何かで観たカメラワークやアングル、何かで観たような宇宙人とその質感、何かで観た宇宙船内の造形、スローモーションの使い所・・・「いつか映画を作るならこんな映像を使いたい・・・」という個人(監督)の憧れを集めに集めた映画は、タイムトラベル映画にありがちな矛盾を取り除こうと随分努力されていて「いつか映画を作るならこんな疑問は残さない・・・」という気持ちが表れた映画だと思うのですが、結局どうしてもありがちな矛盾が発生しています。
 

 何となく面白いのだけれど、どことなくB級的な映画を作る人・・・、この映画の監督のそんな印象は3作目の「ALWAYS 三丁目の夕日」以降、作品の幅が広がり大きく変わっていきます。

「ALWAYS 三丁目の夕日」の監督オファーを受けたことが監督の方向性を変えた・・・多くの評論家が言っていることが「ジュブナイル」と「リターナー」の観賞でわかります。

「ジュブナイル」も「リターナー」も観賞後「次の映画も観てみたい」と思ったのは確かなのですが、この監督がこんな凄い監督になるとは思ってもいませんでした。
 因みに子役の鈴木 杏さんはこの頃は可愛らしく、その変貌ぶりは監督以上の驚きかもしれません。

 作品も封印されているのかフィルマークスにパッケージ写真もないようです。
 それにしても「ALWAYS 三丁目の夕日」以降の山崎貴監督作品にハズレはなく、公開が迫ってきた『ゴジラ-1.0』は心底楽しみ。
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